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【韓国の会計・税務レポート】2017『外監法』発議による主要議題のまとめ

2017年1月末まで、様々な株式会社の外部監査に関する法律(以下、「外監法」という)の改定案が国会(第20代)に発議されましたが、今回は外監法改定案の主要内容及び動向についてご説明します。

但し、外監法改定案の説明をするに先立ち、一般的に国会の立法活動がどのように進行されているかについて簡単にご説明します。

 

Ⅰ. 立法手続きの概観

憲法上立法権は国会にあり、国会議員と政府のみが国会に法律案を提出することができます(憲法第52条)。法律は、国会議員と政府の法律案提出、国会本会議報告、所管常任委員会(又は特別委員会)への回付・審査、法制司法委員会の体系・自救審査、本会議への回付・審議及び表決、政府移送及び公布により制定されます。

  • 法律案提出 → 国会本会議報告 → 委員会回付・審査 → 法制司法委員会体系・自救審査 → 本会議審議・表決 → 政府移送 → 公布

 

II. 第20代国会外監法案の発議状況

1. 国会議員発議案(12案)

2017年1月末まで発議された議院立法案は総12案です。そのうち、初期に発議された4案の法案については、2016.11.16.の政務委員会全体会議で法案審査小委員会に回付しており、 2016.11.21.法案審査小委員会で論議した結果、今後政府立法案と共に併合審査することにしました。従って、現在まで発議された議院立法案は、2017.1.12.に発議された政府立法案と共に今年初旬に論議されると予想されており、以下、政府発議案で詳しくご説明します。

2. 政府発議案(2017.1.13.政務委員会回付)

政府は、2017.1.12.国務会議を通過した外監法全部改定案を発議しており、2017.1.13.政務委員会に回付されました。政府の外監法全部改定案は、有限会社等会計監督の目の届かない部分を規律し、外部監査の品質改善及び会社・監査人の責任を強化する内容が含まれています。その主な内容は以下の通りです。

⑴   有限会社に対する外部監査導入

現在、有限会社は外部監査が義務化されていないため、会計監督上規制の空白が発生します。そのため、有限会社を外監法上外部監査対象に含め、法律名も『株式会社等の外部監査に関する法律』に変更しました。これは、有限会社に信頼性のある会計情報生産を誘導し、利害関係者(取引先、債権者、消費者等)に対する保護を強化するためのものであるとみえます。

⑵   大型非上場株式会社の会計規律強化

利害関係者の多い大型非上場株式会社に対し、上場会社に準ずる強化された会計規律(会計法人のみ外部監査可能、3年間連続して同一監査人選任義務化等)を適用することになります。これは、多数の利害関係者保護強化及び上場-非上場会社間の会計規制差益を解消するためのものと解釈されます。

⑶   外部監査人の選任手続き改善

監査人の独立性を高めるため、外部監査人選任権限(監査報酬、監査時間、投入人材を含む)を会社「経営陣」から「監査」(又は、「監査委員会」という)に移管し、選任時点も事業年度開始後4ヶ月以内から45日以内に繰上げることにしました。これは、監査意見提示以前(事業年度終了後3ヶ月)に監査人選任契約が締結されるようにし、会社が監査人の監査意見に不当な影響を及ぼす恐れを緩和するための目的であるとも言えます。

⑷   外部監査対象基準に売上高基準を導入

現行外監法上外部監査対象基準となっている資産、負債、従業員数以外に売上高を追加し、会社の規模が小さくても利害関係者が多く、売上高の大きい会社を外監対象に含めました。

⑸   会社の財務諸表代理作成要求等禁止

現行外監法上監査人が会社の財務諸表を代理作成することは禁止されているものの、会社の代理作成要求、又は諮問要請に対する禁止を規定してはいません。

これに、会社の財務諸表代理作成要求又は諮問要請を全て禁止し、監査人の会社財務諸表作成への介入を根本的に遮断することによって、監査人の「自己監査」のリスクを除去するという目的で立法されました。

⑹   会計法人の監査品質管理強化

会計法人の適正な監査システムを規定する「品質管理基準」の法的根拠を設け、会計法人に監査品質基準の遵守義務を賦課するためのものです。

⑺   取締役の不正行為発見時の監査人の証券先物委員会への報告義務

現行外監法では、監査人は取締役の不正行為等を発見した場合に、監査(又は監査委員会)にのみ通報していますが、これを証券先物委員会にも報告することと義務を賦課して取締役の不正行為を遮断し、監査人の実質的な監査権限を確保するのがその趣旨です。

⑻   会計法人代表取締役を制裁する根拠の用意

会計法人の代表取締役をして会計法人の不実監査遮断に力を注ぐようにするため、『監査業務品質管理不足』により『重大な不実監査』が発生した場合に、会計法人の代表取締役を制裁できるようにしました。

⑼   不正行為申告に対する褒賞金支払対象拡大

現行外監法では、『株券上場法人』に対してのみ内部告発褒賞金が支払われましたが、『株券上場法人』ではない全ての外部監査対象会社の不正行為申告者に対しても内部申告褒賞金を支払うこととしました。

⑽   会社に対する課徴金制度を導入

資本市場法上粉飾会計会社に対しては、開示違反として課徴金を賦課することができます。しかし、非上場法人は資本市場法上事業報告書提出対象法人ではないため課徴金を賦課することができず、課徴金賦課基準が募集・売上・株式取引金額で粉飾規模を反映できないとの意見がありました。これに、外監法で粉飾会計会社に対する課徴金(会計粉飾金額の10%、最大20億ウォン)を導入することによって、粉飾会計への誘引が減少されるようにしました。

 

-以上-