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【韓国の会計・税務レポート】債務不履行による違約金に対する源泉徴収

内国法人が外国法人と締結した国内に所在する財産権の売買契約において、買収者である内国法人が売渡者である外国法人に契約金を支払ったが、内国法人が売買契約で定められた債務を履行できず、契約金が違約金に振替えられて回収できなくなった場合、内国法人が同違約金に対し法人税を源泉徴収して納付しなければならないとの大法院(:日本の最高裁判所に当たる。)の判決(2019.07.04.宣告2017ヅ38645)をご紹介します。韓国法人と日本法人間で締結された国際契約で、契約不履行による違約金の問題が発生する場合の税務上の取扱についても簡単にご説明します。

 

 

1.事件の概要

(1)  内国法人のB社は、2008年にマレーシアのラブアンに本店をおいている外国法人C社と、C社が保有している他の内国法人の株式100%を買収する契約を締結し、2008年11月まで売買代金を精算することにした。B社は、C社に契約金として590億ウォンを支払った。

(2) A社は、2008年11月にB社の契約当事者の地位を承継したが、精算日まで売買代金を支払うことができなかった。

(3) 結局、A社は、契約金590億ウォンが違約金に振替えられ、回収することができなくなった。

(4) 課税当局は、外国法人C社に帰属された契約金590億ウォンが、国内源泉所得のうち「契約の解約により国内で支払う違約金」に該当するにも関わらず、A社が法人税を源泉徴収しなかったとし、A社に加算税を含めて約162億ウォンの法人税を2013年に課税した。

 

2.第1審と第2審の判決

第1審では、契約が解除され、内国法人が外国法人に支払った契約金が違約金に振替えられたことは、内国法人は違約金を支払った者に該当し、これに対する源泉徴収義務を負担するとして、課税当局の法人税賦課は適法であると判決しました。

しかし、第2審では、当初支払った契約金が違約金に振替えられた場合は、内国法人が違約金を現実的に支払ったことと同一な効果のある給付行為とみなすことができないため、A社は源泉徴収義務を負担しないと判決しました。

 

3.大法院の判決

大法院は、第1審と同様に、内国法人が外国法人に契約金を支払ったが、債務不履行により同契約金が違約金に振替えられた場合、内国法人は法人税法により外国法人の国内源泉所得である違約金に対して、源泉徴収義務があると判断しました。また、内国法人に源泉徴収義務がないと解釈する場合、当事者間の約定により、外国法人の国内源泉所得に対する法人税の徴収が不可能になる不合理な結果が発生する可能性があると指摘しました。

 

4.韓国法人と日本法人間での適用

韓国の現行法人税法第93条第10号ナ目では、国内で支払う違約金や賠償金で、大統領令で定める所得を国内に源泉のあるその他所得の1つと規定しています。委任規定である法人税法施行令第132条第10項では、法人税法第92条第10号ナ目で規定している大統領令で定める所得とは、財産権に関する契約の違約又は解約により支払を受ける損害賠償で、その名目如何を問わず、本来の契約内容となる支払自体に対する損害を超えて賠償を受ける金銭又はその他物品の価額を言うと規定しています。このような国内源泉所得を外国法人に支払う場合に適用される源泉徴収税率は、22%(地方所得税率を含む)になります。

従って、債務不履行に対する責任が内国法人にあり、内国法人が契約金を違約金として弁償する場合、違約金は国内源泉所得に該当するため、内国法人は違約金に対する法人税を源泉徴収して納付しなければなりません。内国法人が外国法人と国際契約を締結する際、注意する必要があると考えられます。

しかし、日韓租税条約第22条では、その他所得に対する課税原則として、居住地国課税原則を採択しています。即ち、所得発生場所に関係なく、その他所得を得る者の居住地国に排他的課税権を付与しているため、韓国法人に債務不履行の責任があり、その責任による違約金を日本法人に支払っても、韓国法人が同違約金に対し法人税を源泉徴収する必要はありません。

なお、日本の法人税法施行令第180条第1号でも、国内において行う業務又は国内にある資産に関して受ける保険金、補償金、又は損害賠償金(これらに類するものを含む。)に係る所得を、国内に源泉のある所得と規定していますが、法人税法第139条第1項で、租税条約で別途の規定をおいている場合はそれに従うと規定しています。同様に、日本法人に債務不履行の責任があり、その責任による違約金を韓国法人に支払っても、日本法人が同違約金に対し源泉徴収する必要はないと考えられます。

 

- 以上 -