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日本企業の韓国への進出形態の比較

(はじめに)

今回の号では、日系企業の韓国進出形態のうち、主要な進出形態である現地法人と支店の各特徴、及びメリット/デメリットを比較して、説明します。

日本企業が韓国に進出する場合、一昔前までは多くの規制がありました。例えば、完全子会社の設立が認められず、合弁会社形態で進出せざるを得ない時代もありました。しかし、1997年に発生したアジア通貨危機以降、韓国政府は外資誘致を促進するため、それまでの外資規制を大幅に緩和し、現在は多様な投資形態が可能となりました。

日本企業の韓国への進出形態は、(1)現地法人の設立、(2)支店の設置、(3)駐在員事務所の設置、(4)既存韓国法人の株式を買収する形態等がありますが、現時点において最もよく目にする進出形態は、現地法人の設立または支店の設置です。

そこで、韓国進出にあたってどの形態で進出するのがよいのかを判断する材料として、現地法人と支店の各特徴、及びメリット/デメリットを比較して説明いたします。

 

1. 現地法人と支店の特徴

(1)根拠法律及び性格

現地法人は、外国人投資促進法に基づいて、 韓国法律によって設立された内国法人であるため、親会社とは会計と決算が互いに異なる独立した法人をいいます。

一方、支店は、外国為替取引法及び外国為替取引規程に基づく、外国法律によって設立された外国法人の一部として、本社とは会計と決算を共にする統一体である形をいいます。

(2)事業活動の範囲

現地法人の場合、郵便業などのように外国人投資が禁止された業種、または発電業などのように外国人投資に対する許容基準のある業種を除き、全ての事業を営むことができます。但し、建設業または飲食店業のように、事前に管轄区役所などの認許可を得ずには営業不可能な業種があります。従って、設立時、定款及び登記簿謄本上の事業活動の範囲には今後営為予定である全ての事業を含める必要があります。そうすれば、追加的な変更手続などを行うことなく事業を営むことができます。

一方、支店の場合は、申告された事業活動の範囲内だけで営業を営むことができますので、営為の目的が変更または追加される場合は、別途の申告手続あるいは許可手続が必要です。

 

2. 設立及び設置の手続

現地法人の設立及び支店の設置の手続は以下の通りです。両方とも必要書類が全てそろった時点から、2週間内に設立が可能です。

(1)現地法人の設立

①外国為替銀行への外国人投資申告 → ②商業登記所への設立登記 → ③税務署への事業者登録 → ④外国人投資企業の登録

(2)支店の設置

①外国為替銀行への設置申告 → ②商業登記所への設置登記 → ③税務署への事業者登録

現地法人は、設立申告書類の準備が支店より多い反面、裁判所の審査が提出された書類の形式的審査に限るため、設立手続が簡単です。一方、支店の場合、必要書類が比較的少ない反面、最近裁判所の審査が厳しくなったことから、補完書類の追加要請がなされるときが、しばしば発生します。

 

3.設立にあたる資金調達方法及び費用比較

(1)資金調達方法

現地法人の場合は、出資、増資、及び親会社からの借入金の方法で資金調達が可能です。外国人投資企業になるための最少出資金額は100,000千ウォンであり、免許が必要な事業を営むためには一定規模の資本金(例えば、建設業の場合、200,000千ウォン)が必要です。しかし、支店の場合は、本社から営業資金導入の方法でのみ資金調達が可能です。

(2) 設立費用

設立費用には、登録税、地方教育税及びその他法務士手数料等がかかります。現地法人の資本登記に対する登録税及び地方教育税は、資本金の1.44%(首都圏の場合)です。一方、支店の場合は一定額となり、設置登記に対する登録税及び地方教育税は82,800ウォン(首都圏の場合)となります。

 

4.設立後の運営上の比較

(1) 法人税の課税所得金額及び税率

現地法人は国内外所得に対して課税されますが、支店の場合は支店に帰属される韓国源泉所得に対してのみ課税されます。但し、支店が本社の対韓国販売に関連する場合、対韓国売上高及び売上原価を計算して支店の益金及び損金とし、本店経費の配賦することが可能ですが、その計算方法が複雑です。

法人税率は、課税標準2億ウォンまでは11%(地方所得税を含む)で、課税標準2億ウォン超過分に対しては24.2%(2012年1月1日より開始する事業年度からは22%)(地方所得税を含む)です。

(2) 租税減免のインセンティブ

現地法人は、韓国の租税特例制限法による各種租税減免を受けることが可能ですが、代表的な租税減免は次のとおりです。

① 外国人投資に対する法人税などの減免:外国人投資企業のうち、高度技術を随伴する企業及び外国人投資専用工団に入居した企業などに対する法人税の減免及び配当に対する源泉税の減免

② 中小企業に対する特別税額減免:製造業など減免対象業種を営む中小企業に対しては、当該事業場で発生した所得に対する法人税額の一定率(業種、規模及び所在地域によって5%~30%)に相当する税額を減免

これに対し、支店は、租税減免のインセンティブはありません。

(3) 利益金の送金

現地法人の親会社への配当所得に対して韓日租税条約上の源泉徴収税率は5%(持分率が25%未満の場合は15%)ですが、支店の利益金の本社への送金額は源泉徴収対象になりません。

なお、現地法人が韓国で法人税を納付した後の利益に対して日本の親会社に配当する場合、日本では、同金額の5%のみを課税し、残りの95%に対しては免税(益金不算入)となります。

一方、支店の利益は、本社の益金として、日本で課税されます。

(4) 公認会計士による外部監査

直前事業年度末における総資産が100億ウォン以上の現地法人は、法定監査対象になるため、必ず公認会計士(または会計法人)による監査が必要です。

一方、支店は、純利益金の営業資金導入額に対する比率が100%以上または純利益金が10億ウォンを超える場合、公認会計士の監査報告書が必要です。

なお、両方とも親会社または本社及び会社の必要により任意監査を実施することができます。

(5) 借入金の調達

現地法人の場合、親会社からの外貨借入のみならず、韓国内の借入も可能です。一方、支店の場合、本社との金銭貸借契約を認められないため、本社からの借入が難しく、韓国内の金融機関からの借入も実務上、非常に困難です。

 

5.その他の比較

(1) 駐在員のビザ取得

現地法人の外国人投資資格のビザ(D-8)の発給は支店より簡単であります。支店の駐在員資格のビザ(D-7)は代表者の1名のみに発給されるのが原則です。

(2) 従業員の勤労意欲

現地法人の韓国人従業員が役員として選任され得るため、韓国人従業員の勤労意欲の向上が図れます。一方、支店の韓国人従業員は、最高職級が副支店長または部長にすぎない場合が多いため、韓国人従業員の勤労意欲を鼓吹するという観点では現地法人より不利です。

(3) 顧客の信頼度

顧客が感じる信頼度といえば、支店よりは現地法人が韓国顧客に安定感を与えます。

 

6.おわりに

実務上、韓国に進出する企業のほとんどが、現地法人の形態を選択していると感じられます。その理由としては、資金調達の柔軟性、ビザ取得の容易性、会計処理の簡便性等を考えると現地法人の方がメリットがある一方で、支店が現地法人に比べてメリットのある点がほとんどないためです。

それでも、支店形態を選択する企業も中にはありますが、それは制度や手続き的な合理性というよりも、韓国内の既存の代理店などに配慮するといった、心情的な要因によるものと思われます。

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