- 2016年7月19日
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【韓国の会計・税務レポート】貸倒金及び貸倒引当金
『貸倒金』とは、売上債権や貸付金、その他これに準ずる債権(以下、「債権」という)のうち、全部、又は一部を回収できない場合に発生する費用を言い、『貸倒引当金』とは、回収不能債権の推算額で、将来の貸倒可能性に備えるため設定した評価性引当金を言います。
韓国の税法では、貸倒金の認定範囲及び貸倒引当金の推算額算定基準を厳格に規定することにより、任意的に債権の回収不能を判断して費用として処理することや過多に貸倒引当金を設定することに制限をおいています。
今回は、貸倒金及び貸倒引当金と関連した税法上の規定について説明します。
1. 貸倒金
(1) 貸倒金の範囲
債権の不良化は徐々に進行するのが一般的であるため、回収不能の判断基準は、法人、又は個人ごとに異なります。このようなことを勘案して韓国の税法では貸倒金の範囲を非常に厳格に規定しており、下記に該当する場合にのみ費用と認定しています。
区分 |
具体的な範囲 |
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消滅時効が成立した債権 |
① 商法による消滅時効が成立した売掛金及び未収金 ② 手形法(小切手法)による消滅時効が成立した手形(小切手) ③ 民法による消滅時効が成立した貸付金及び前払金 |
会計処理可否と関係なく税法上損金認定 |
その他の債権 |
① 裁判所の更生計画認可の決定、又は免責決定により回収不能と確定された債権 ② 競売が取消された差押債権 ③ 物品の輸出、又は外国での役務提供により発生した債権で、外国為替取引に関する法令により債権回収義務の免除を受けたもの |
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不渡発生日*1より6ヶ月以上経った一定債権 |
不渡日より6ヶ月以上経った小切手、又は手形上の債権及び売掛金(中小企業の売掛金で、不渡発生日以前のもののみ該当) |
会計処理した場合のみ税法上損金認定 |
一定債務者に対する債権 |
① 債務者の破産、強制執行、刑の執行、事業の廃止、死亡、失踪及び行方不明により回収できない債権 ② 回収期日が6ヶ月以上経った債権のうち、債権価額が20万ウォン以下の債権 |
*1 不渡発生日とは、所持している不渡小切手や不渡手形の支払期日を言います。
(2) 貸倒金で損金算入できる債権の範囲
韓国の税法では、上記の通り貸倒金の範囲は厳格に制限しているものの、貸倒処理できる債権の範囲に対しては特別な制限をおいていません。従って、一般的な商取引で発生する売上債権はもちろん、営業取引以外の債権、回収できない付加価値税売上税額未収金(付加価値税法による貸倒税額控除を受けたのもは除く)についても貸倒処理を行うことができます。
但し、以下の債権は貸倒金に損金算入することができず、貸倒引当金の設定対象債権からも除外されます。
① 債務保証により発生した求償債権
② 特殊関係者に法人の業務と関係なく支払った仮払金
2. 貸倒引当金
(1) 貸倒引当金に対する税務処理
企業会計は、報告期間末ごとに債権の貸倒発生に客観的な証拠があるかを評価し、そのような証拠がある場合、貸倒額を推定して貸倒引当金を認識しています。しかし、このような形態は恣意的な判断が介入され、課税の衡平を損なう恐れがあるため、税法では貸倒額の推定方式に対する基準をより明確に規定しています。
貸倒引当金の損金算入は、会社が費用と会計処理した場合にのみ一定限度額範囲内で損金として認定を受けることができ、会社が費用に計上しない、或いは足りなく計上した場合は、税務調整により損金算入することができます。
(2) 設定対象債権の範囲
区分 |
設定対象債権の範囲 |
設定対象から除外されるもの |
売掛金 |
商品・製品の販売価額、役務などの提供による事業収入金額の未収額 |
– |
貸付金 |
金銭消費貸借契約などにより他人に貸付けた金額 |
特殊関係者に該当法人の業務と関係なく支払った仮払金など |
その他これに準ずる債権 |
① 手形上の債権 ② 未収金 ③ その他企業会計基準による貸倒引当金設定対象債権*3 |
① 割引手形、裏書譲渡した手形 ② 債務保証により発生した求償債権 ③ 特殊関係者に資産を高価譲渡する場合、その時価超過額に相当する債権 |
*3 回収期日が到来していない割賦販売未収金、作業進行率により計上した工事未収金、有形固定資産などの売却代金未収額など
(3) 貸倒引当金の損金算入限度額
貸倒引当金の損金算入限度額は、以下の金額にします。
貸倒引当金損金算入限度額 = 事業年度終了日現在における設定対象債権の税務上帳簿価額*4×貸倒率*5 |
*4 設定対象債権の税務上帳簿価額合計額
= 財務状態表上の帳簿価額 + 債権関連留保 – 設定対象から除外される債権価額
*5 貸倒率 = Max(①、②)
① 1%
② 貸倒実績率 = 当該事業年度の貸倒金÷直接事業年度終了日現在における債権残高