- 2016年8月29日
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【韓国の会計・税務レポート】租税避難防止税制について
韓国の税法では、税金の軽い国(以下、「租税避難所; Tax Shelter 」という)に架空の会社を設立して所得を不当に移転する場合、当該所得が国内出資者に配当されたこととみなして、法人税又は所得税を課税する租税避難防止税制という制度があります。
これは、多国籍企業が租税避難所に架空の会社を設立して租税を回避することを防止するため、大部分の国で採択している税制であると言えます。
今回は、租税避難防止税制に関わる韓国税法上の規定について説明します。
1. 概要
(1) 租税避難防止税制の定義
租税避難防止税制とは、租税避難所に本店、又は主事務所をおいている外国法人に対し内国人が出資した場合、その外国法人のうち、内国人と特殊関係のある法人(以下、「特定外国法人」という。)の各事業年度末現在において配当可能な留保所得のうち内国人に帰属される金額は、内国人が配当を受けたこととみなす制度を言います。
ここで、内国人とは、特定外国法人の各事業年度末現在において発行株式総数の10%以上を直接又は間接的に保有している者を意味し、発行株式総数の10%を計算する際は、内国人の特殊関係者のうち親族関係及び経済的な連結関係にある者が直接保有する発行株式を含めなければなりません。
また、特殊関係のある法人とは、議決権のある株式の50%以上を直接又は間接的に所有する関係、或いは資本の出資関係、財貨・役務の取引関係、資金の貸付などにより取引当事者間に共通の利害関係があり、ある一方が他方の事業方針を実質的に取り決められる関係が成立する場合を言います。
但し、以下の場合は租税避難防止税制を適用しません。
① 特定外国法人の各事業年度末現在において実際の発生所得が2億ウォン以下の場合
② 特定外国法人が租税避難所での事業のため必要な事務所・店舗・工場などの固定された施設を有しており、その法人が自ら事業を管理・支配・運営し、その国又地域で主に事業を営む場合(但し、業種、収入金額のうち業種別・特殊関係者との取引から発行した比率などにより条件無しで租税避難所税制が適用される場合もある)
(2) 租税避難所の範囲
租税避難所とは、法人の負担税額が実際発生所得の15%以下の国又は地域を言います。これは、その国の税法によりその法人の当該事業年度を含めた直近3事業年度の税引前当期純利益合計額に対する租税合計額が、同法人の直近3事業年度の税引前当期純利益合計額の15%以下の国又は地域を言います。
2. 配当みなし金額の計算及び処理方法
(1) 配当みなし金額の計算
租税避難税制の適用により内国人の配当とみなされる金額は以下の通りです。
配当みなし金額 = 特定外国法人の配当可能留保所得 × 当該内国人の特定外国法人株式所有比率 |
配当可能留保所得は、処分前利益剰余金から利益剰余金処分による配当金、賞与金など、株式、又は出資証券の評価利益のうち当該事業年度末現在において実現されない金額などを減算して計算します。
(2) 配当みなし金額の益金帰属時期など
1) 益金帰属時期
租税避難税制の適用による配当みなし金額は、特定外国法人の当該事業年度終了日の翌日から60日が属される内国人の課税年度の益金、又は配当所得に算入します。
2) 外国納付税額控除
特定外国法人が内国人に実際に配当する際に外国に納付した税額がある場合、その税額は法人税法及び所得税法による外国納付税額控除(又は損金算入)の規定を適用します。
3. 資料提出の義務
特定外国法人の留保所得について合算課税適用対象となる内国人は、以下の資料を法人税課税標準申告期限、又は所得税課税標準確定申告期限までに納税地管轄税務署長に提出しなければなりません。
① 特定外国法人の財務諸表
② 特定外国法人の法人税申告書及び付随書類
③ 特定外国法人の留保所得計算明細書
④ その他必要な書類
- 以上 -