トップページ > 会計税務ニュース > 外国法人に支払うソフトウェアの使用対価を使用料所得と判断した事例

STARSIAがお届けする業界NEWS 会計税務ニュース

外国法人に支払うソフトウェアの使用対価を使用料所得と判断した事例

ソフトウェアに対する権利は知的財産権であり、法律により保護されるのが一般的です。
ソフトウェアを販売する者は、複製を禁止することができ、
対価の支払いも定額又はユーザー数に比例して決定する等対価の算定方法も
通常の商品販売対価とは異なって様々です。
外国法人に支払うソフトウェアの使用対価と関連した源泉徴収問題も
国際租税分野で引き続き争点となってきました。

今回は、外国法人に支払うソフトウェアの使用対価を使用料所得と判断した租税審判院[1]
の決定例(租審2021ソ1184、2022.9.20)について紹介します。

 

1.概要

請求法人は外国法人が100%出資して2017年3月頃に設立された完全子会社で、
国内で争点となったソフトウェアの再販売等を担当しており、
過去に外国法人は国内の第3者流通業者を通じて争点となったソフトウェア等を販売したことがある。

外国法人は、争点となったソフトウェア等の単一供給チャネル構築及び経営効率向上等のため、
2017年1月1日から請求法人とInternational Distribution Agreement(国際販売権契約書)を締結し
取引先を第3者流通業者から請求法人に変更した。

請求法人は2017事業年度から2019事業年度まで外国法人に争点となった
ソフトウェアの再販売による争点の金額を支払う際、
使用料所得ではなく事業所得とみて法人税の源泉徴収をしなかった。

調査庁は2020年5月13日から2020年8月9日まで請求法人に対する法人税調査を実施し、
請求法人が外国法人に支払った争点の金額を
法人税法及び該当国との租税条約上の使用料所得に該当するものと判断し源泉税を追徴した。

 

2.請求法人の主張

(1) 争点となったソフトウェアは、汎用ソフトウェアとして請求法人が外国法人に支払った
争点の金額は一般商品の購入・販売による代価であるため、
使用料所得ではなく事業所得に該当する。

(2) 請求法人は争点となったソフトウェアに関する如何なる非公開原始コードや
関連技術に対する移転を受けておらず、
争点となったソフトウェアは個別注文により製作・改作されていない。
また、使用形態や再生量規模により対価が決定されてもいないため、
争点の金額は使用料所得とみることができない。

(3) 争点の金額は租税条約上のノウハウや知識、経験及び技能(技術)の使用、
又は使用権に対する対価ではない。

 

3.処分庁の意見

(1) 争点となったソフトウェアは高度な技術・経験・ノウハウが蓄積されたもので、
汎用ソフトウェアとみなし難く、その販売及び保守役務において
ノウハウがソフトウェアに吞み込まれて国内に移転されたものであるため、
争点の金額は使用料所得に該当する。

(2) 請求法人は争点となったソフトウェアの販売契約締結前に顧客のニーズを
把握した上で最適なソリューションを提示するカスタマイズ過程を経ているため、
同ソフトウェアを汎用ソフトウェアとみなすことは難しい。

(3) 争点となったソフトウェアは一般人が使い難く、
適切に使用するためには相当な知識及び経験を持つ
エンジニアの技術支援及び教育が必要である。

(4) 請求法人は、外国法人から争点となったソフトウェアに関する教育の提供を受け、
これを基に顧客に販売、メンテナンス、コンサルティング及び教育等のサービスを提供する。

(5) 争点となったソフトウェアはライセンスタイプ、
モジュール構成等により異なる価格が策定される。

 

4.租審判院の判

租税審判院は以下の根拠をもって争点の金額を使用料所得と判断しました。

(1) 争点となったソフトウェアは高度な技術力及びノウハウが凝縮されたもので、
外国法人は毎年売上高の20%をR&D費用として支出しており、
国内では争点となったソフトウェアと同レベルのプログラムを
開発・供給する業者が事実上存在しないものとみられる。

(2) 争点となったソフトウェアの価格はモジュールごとに異なっており、かなり高価であり、
使用期間、ユーザー数及び使用地域によりライセンスタイプが異なっている。

(3) 請求法人は、購入契約締結前に必ずユーザーのニーズ及びシステム環境を分析し、
それに適したソフトウェアソリューションを提示している。

(4) 請求法人の人的構成の半分が修士・博士出身の高学歴エンジニアであり、
技術支援過程で外国法人のエンジニアと協業して作業を進行する。
外国法人のエンジニアが国内出張に来ることもあり、ウェブサイトを通じて技術支援を行っている。
ユーザーが要求する機能がある場合、これを外国法人に伝え、
今後のアップデート時に機能が追加される。

(5) 請求法人エンジニアは外国法人からオンライン教育を受けるか、
或いは国外出張を通じて知識を習得して顧客に伝えており、
Learning hubウェブサイトを運営する等請求法人が年千回以上の教育を実施している。

(6) 外国法人と請求法人との間の契約書によると、秘密保持条項、ライセンス付与条項、
ソフトウェア使用・譲渡制限条項、保証条項などが含まれているため、
一般のノウハウ契約書と類似しており、
争点となったソフトウェアは外国法人の知的財産権(IP)使用に関する契約で、
一般的な売買契約ではないことを明示している。

(7) 外国法人はライセンスロイヤルティ契約を比較対象取引とみて、
争点の金額に対する正常価格を分析している。

(8) 請求法人の全体売上高のうち、技術支援項目が占める割合は約48%に達している。

(9) 2017年3月以前まで国内の第3者流通会社が
外国法人に争点となったソフトウェアに対する代金支払時、
これを使用料所得とみて約10年間源泉徴収した。

 


[1] 租税審判院は国務総理所属機関で、国税庁、関税庁及び地方自治体が賦課する国税、関税及び地方税に対する納税者の不服を審理して救済する、独立した租税専門権利救済機関である。

ページトップへ

月別