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域外脱税者に対する税務調査

国税庁は、2023年5月31日付の報道資料にて公正、遵法の価値を毀損する域外脱税者52人に対する税務調査の着手を発表しました。

今回の税務調査対象の類型は、①現地法人を利用して輸出取引を操作した輸出業者、②投資収益を不当に搬出した私募ファンド及び域外にグレーな手法で贈与した資産家、③事業構造を偽装して国内所得を流出した多国籍企業に区分されます。

以下では、類型別事例について紹介します。

<事例 1>

輸出物量を社主の子女の海外ペーパーカンパニーに不当に移転し、蓄積された脱税資金を社主一家の海外不動産取得に使用

 

(1) 主要脱漏の疑い

・内国法人Aは、海外現地法人Bで製品を委託製造して、現地取引先に供給する外国引渡輸出方式(代金は国内に入ってくるが、物品を国内通関なしで外国から引渡す輸出方式)で取引

・社主の子女のペーパーカンパニーCを香港に設立した後、国内法人Aが引き続き事業を行っているにもかかわらず、形式上香港所在のペーパーカンパニーCが事業を行う構造に変更

・国内法人Aの輸出量は急減

・社主一家は輸出物量を横領して蓄積したペーパーカンパニーCの資金を流出して、合計27軒の海外住宅を購入

・国内外国為替・課税当局に住宅取得事実を申告せず賃貸所得を脱税

 

(2) 調査の方向

実質的にペーパーカンパニーCの所得は内国法人Aの所得に該当するため、内国法人Aに法人税を課税し、社主一家が海外不動産を通して稼いだ賃貸所得を追徴

<事例 2>

国外の関係会社にソフトウェアの海外配給権をグレーな手法にて低価格で提供し、国外の関係会社が負担すべき費用を代わりに負担

 

(1) 主要脱漏の疑い

・ソフトウェア開発会社の国内法人Aは、国外関係会社Bを海外配給会社と選定し、ソフトウェアの配給権限を付与

・国外関係会社Bはソフトウェア開発人材やノウハウを持っていないものの、内国法人Aは自社のソフトウェア開発時に国外関係会社Bのノウハウを使用したとの名目で、国外関係会社Bより受取った使用料の一部を還付(pay-back)して、国外関係会社Bを不当に支援

・現地でのマーケティング費用は配給利益を得る配給会社Bが支払うべきであるものの、国内法人Aがマーケティング費用を代わりに負担

 

(2) 調査の方向

国内法人Aが国外関係会社Bに不当に支払った使用料と、Bに代わって負担した現地のマーケティング費用に対して否認

<事例 3>

域外私募ファンドの国内投資収益の一部をファンド運用会社が成功報酬として受取り、社主所有のペーパーカンパニーに流出

 

(1) 主要脱漏の疑い

・外国籍のAは外資系銀行の国内支店ファンドマネジャー出身で、外国資本の投資を受け域外私募ファンドBを設立

・Aが支配・経営するファンド運用会社Cは、Bの国内企業買収・売却関連役務をBに提供し、短期間で投資金の500%を超える売却差益が発生

・Bは当該役務対価(成功報酬)をCではなく、Aが所有するペーパーカンパニーDに不当に支払い、Cは成功報酬の3%程度のみを対価として受取る

・Aは所得税法上、居住者であるにもかかわらず外国国籍を利用して非居住者に偽装し、ファンドや運用会社から受領した給与を脱税

 

(2) 調査の方向

Dが受取ったサービス対価をCの所得として課税し、Aが居住者であることを立証して所得税も課税

<事例 4>

多国籍企業が国内顧客に莫大な収益を上げていながらも、主要事業機能を多数の国内子会社に分散して課税を回避

(1) 主要脱漏の疑い

・多国籍企業Aが国内顧客にオンラインサービスを提供し、必須の営業・販売、広報・マーケティング、研究開発機能を国内子会社に分散

・子会社の機能全体で見れば、国内子会社がAの本質的、かつ重要な事業活動を行うため、Aは国内事業場を登録し収益に対して法人税を申告しなければならないが、国内子会社を単純サービス提供者に偽装して法人税申告を行わない

・その結果、多国籍企業Aは莫大な収益を上げても税金納付なく、所得を国外に持ち帰ることになり、国内子会社は費用補填水準の利益のみを国内に申告・納付

(2) 調査の方向

多国籍企業Aが国内で収めた収益のうち、国内事業場帰属分に対して課税

<事例 5>

国内から撤退する前に製品を高額で輸入し、虚偽のクレーム代の名目で国内に留保された利益を国外に移転

(1) 主要脱漏の疑い

・外国法人Aの国内子会社であるBは、市場変化による国内撤退を控え、外国法人Aから製品を高額で購入して損失が発生

・設立以後黒字状態が続いていた国内子会社のBは、高価な商品仕入の結果により-10%を越える営業損失を記録し、国内で約15年間積上げた数千億ウォンの利益剰余金をたった3年でAに移転した後、債務超過状態に転換

・国内子会社のBが外国法人Aから製品を仕入れて国内市場に販売する構造にもかかわらず、Bはクレーム代の名目で外国法人Aに送金

 

(2) 調査の方向

国内子会社であるBの国内市場撤退前に行われた高価な仕入及びクレーム代に対し課税

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