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【韓国の会計・税務レポート】新型コロナウイルス以降の移転価格税務調査に対する備え

2019年に韓国で1兆8,000億ウォンを超過する売上高及び約1,300億ウォンの当期純利益を達成したスターバックスコーヒーコリアに対し、税務調査が実施されていることは周知の事実です。今回の税務調査は非定期税務調査で、税務調査を担当しているソウル地方国税庁の国際取引調査局は、多国籍企業で最も多く発生する脱税類型である移転価格操作の有無の確認に集中するものと知られています。スターバックスコーヒーコリアは、アメリカのスターバックスと韓国のイーマートが各々50%の持分を所有しており、コーヒー豆はもちろんのこと、売場のインテリア資材までアメリカ等から輸入しています。

 

国税庁は、新型コロナウイルス(以下、「コロナ」と言う)拡散の勢いがみえ始めた去る2月末から、事実上税務調査を中断しました。しかし、政府が『社会的距離の確保』を終わらせ、5月6日から『生活間距離の確保』に転換したことにより、国税庁は今年計画していた税務調査を本格的に実施し始めました(上記のスターバックスコーヒーコリアに対する税務調査も5月中旬に開始)。但し、最近の経済状況を考慮し、最小限の税務調査を実施すると明らかにしました。

 

政府は、コロナに対応する税制支援(2020年5月の記事を参考)を発表しましたが、その支援の大部分は零細個人営業者や特別災難地域所在の中小企業に限られており、グローバルサプライ・チェーンに相当な打撃を受けている韓国内所在の多国籍企業に対する支援は未だ出ていない状況です。国税庁が今年の初めに発表した「2020年度国税行政運営方案」(2020年2月の記事を参考)で、多国籍企業の攻撃的租税回避に対する検証を強化すると予告したように、コロナの終息後には税収確保のため、むしろスターバックスコーヒーコリアのような多国籍企業に対する税務調査を強化するものと予想されます。

 

コロナにより、売上高や利益率に莫大な打撃を受けている多国籍企業は、被害を最小限にするための事業上の対応を備えなければならないだけでなく、コロナ終息後に行われる税務調査に対する備えも必要であると考えられます。以下では、特に移転価格に対する税務調査関連の対応方案について考えてみます。

まずは、既存の移転価格政策の妥当性の是非について検討する必要があります。多国籍企業グループ内のサプライチェーンの変更があった場合、変更した取引の流れの中で、各々の特殊関係者が行っている役割と負担リスクについて再検討する必要があります。

 

また、変更された取引構造の下で、既存の比較対象企業が適切であるかについて検討する必要があります。比較対象企業との比較可能性の差異を調整するか、調整が難しい場合は、新しい比較対象企業を選定しなければなりません。しかし、比較対象企業の財務情報を入手するまでは相当の時間を要し、さらに比較対象企業にはコロナの影響が反映されていないこともあるため、コロナの影響を点検して事前に対応策を立てるには限界がある場合もあります。

国内所在の多国籍企業が独立企業間の価格を達成できるよう、取引価格を調整する案も考えられます。去る2008年の金融危機の際、ウォン安ドル高による輸入材価格上昇により、輸入販売業を営む企業は、営業利益の減少、乃至は営業損失を経験しました。その後の税務調査で、為替上昇による利益の減少、又は損失については、どちらか一方が全て負担するのではなく、取引価格を調整して当事者間で分担しなければならないと、税務調査官が主張していたことがありました。

 

コロナのような外部環境の変化により売上高や利益率の下落が不可避であることを、課税当局が理解してくれると期待することはできません。多国籍企業は、売上高や利益率の減少がグループ内部の移転価格の問題ではなく、外部的な要因により発生したことを立証して説明する準備をしておく必要があります。例えば、国外特殊関係者との特定取引で損失が生じた場合、その取引を行うこととなった理由や背景、当該取引で損失が生じた理由(例えば、コロナによる為替レートの上昇等)及び各取引当事者が行っている役割や機能等を文書化する必要があります。徹底した備えと準備が、コロナ終息後の税務調査のリスクを減少させることができます。

 

 

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