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【韓国の会計・税務レポート】「製薬・バイオ企業の研究開発費の会計処理関連監督指針」の発表

今回は、金融当局が、製薬・バイオ業界の会計処理に関する不確実性を解消し、会計の透明性を高めるために去る9月19日に発表した、「製薬・バイオ企業の研究開発費の会計処理関連監督指針(以下、「監督指針」と言う)」を紹介します。

 

1.監督指針の発表背景

外国系証券会社を中心に、韓国の一部バイオ上場会社の研究開発費の資産化比重が70%を超過し、グローバル平均よりあまりにも高過ぎるという指摘がありました。これにより金融当局は、去る4月から薬品を開発する過程で発生した研究開発費を財務諸表上費用として認識せず、無形資産として認識できる時点として、製薬・バイオ企業の会計処理の監理を行いました。

製薬・バイオ企業を対象に行われた金融当局の監理は事実上まとまり、金融当局は監理対象企業の研究開発費の資産化処理の適正性に対する事実関係の確認を終え、各企業にも通知したとされています。また、去る8月30日には、金融当局、業界、会計法人等が参加した懇談会の開催後、追加協議を経て、監督指針を備え9月19日に公表することとなりました。

金融当局が製薬・バイオ業界に対する監督指針を備えることになった理由は、製薬・バイオ産業は、資本市場で投資家の関心の高い代表的な高リスク・高収益分野と認識されている状況の中、一部の企業では安定的な収益基盤がなく、売上高の低調、又は営業損失の持続等による上場廃止等が懸念されていました。また、最近の製薬・バイオ企業の株価の急上昇やアメリカのNasdaq Bio Indexに比べ、変動性の拡大等により投資家保護の必要性が提起されています。それだけでなく、このような市場の不安が拡散された場合、制約・バイオ産業のみでなく、資本市場全体に相当な混乱が発生する可能性もあるため、関連する問題点を把握して積極的に解決するためのものでありました。

 

2.関連規定及び制約・バイオ企業の会計処理現況

韓国で採択している国際会計基準(K-IFRS)の第1038号文段57によると、開発段階で使用された費用を無形資産と認識するためには、以下の6つの要件を全て充足しなければなりません。

① 無形資産を使用するか、或いは販売するため、その資産を完成できる技術的実現可能性

② 無形資産を完成して使用するか、或いは販売使用とする企業の意図

③ 無形資産を使用するか、或いは販売できる企業の能力

④ 無形資産が将来の経済的効益を創出する方法

⑤ 無形資産の開発を完了し、それを販売するか、或いは使用するのに必要な技術的、かつ財政的資源等の入手可能性

⑥ 開発過程で発生した無形資産と関連した支出を、信頼性をもって測定できる企業の能力

上記要件の充足可否は、企業と監査人がその企業の特殊な状況を考慮して判断することが原則であり、上記要件のうち、①の『無形資産を完成できる技術的実現可能性』に対しては、様々な意見が存在します。例えば、グローバル製薬企業の場合と同様に、政府の販売許可以降の支出のみを資産として認識すべきであるという意見もあり、グローバル企業の慣行を同一に国内企業に適用するより、国内業界の特性と現実を考慮しなければならないという主張もあります。

国内企業は、長い期間複製薬を主に生産してきたため、最近始めた新薬開発でも過去と同一の会計処理方法を慣行的に適用してきました。

 

3.監督指針の主な内容

今回の監督指針は、新しい会計基準や解釈ではなく、国際会計基準の合理的な解釈範囲内で監督業務の具体的な指針を備え、これを関連業界と共有することにより市場の不確実性を解消するためのものであります。もちろん、各企業は、個別状況により合理的な理由を根拠に監督指針とは異なる判断をして会計処理を行う可能性もあります。

(1)  技術的実現可能性に対する判断基準

薬品類型別に各開発段階(新薬候補物質の発掘→前臨床試験→臨床試験(1相~3相)→政府の販売承認)の特性と、当段階から政府の販売承認まで繋げられる客観的な確立統計等を勘案し、開発費の資産化が可能になる段階を以下の通り設定しました。企業が、以下の基準により資産として認識する場合は、技術的実現可能性の判断に必要な客観的証憑資料を提示しなければならず、以下の基準の前段階で研究開発費を資産と認識した場合は、監理過程で会社の主張と論拠をより綿密に検討する予定です。

<薬品類型別研究開発費の資産化が可能な段階>

類型

資産化が可能な段階

根拠

新薬

臨床3相開始承認

–      長期間多数の患者を対象に試験薬の安全性・薬効に対する検証を経ていない状態(臨床3章開始承認以前)では、一般的に資産価値の客観的立証が難しいと判断される。

–      アメリカの製薬・バイオ業界の統計による直近10年間の臨床3相開始承認以降政府の最終承認率:約50%

Biosimilar

臨床1相開始承認

–      政府がオリジナル薬との類似性検証資料を確認していない状態(臨床1相開始承認以前)では、一般的に資産価値の客観的立証が難しいと判断される。

–      アメリカの研究結果による臨床1相開始承認以降の最終承認率:約60%

Generic

生同性試験計画承認

–      政府がオリジナル薬との化学的同等性検証資料を確認していない状態では、一般的に資産価値の客観的立証が難しいと判断される。

診断試薬

製品検証

(許可申請、外部臨床申請等)

–      外部の客観的な製品検証のない状態では、一般的に資産価値の客観的立証が難しいと判断される。

(2)  原価測定の信頼性を確保

プロジェクト別に投入された材料費、労務費及び外注費等を個別段階別に信頼性をもって区別して集計し、そのうち、個別活動と直接関連のある原価のみ資産に計上されなければなりません。開発費と研究費が混在して区分し難い場合は、全額費用として認識しなければなりません。

(3)  商業化の可能性確認及び減損評価

無形固定資産の商業化意図及び能力、これに必要な技術・財政的資源入手可能性が合理的に提示されなければなりません。開発費を資産と認識した後には、減損関連会計基準によりその資産から得られる将来の経済的効益を評価し、その超過分は減損と認識し、追加支出額は費用として処理されなければなりません。

 

4.今後の推進計画

(1)  監督指針を直ちに公表し、これに従って監督業務を行うことにしました。

(2) 今回の監理で発見された研究開発費の資産化と関連する技術的実現可能性の判断誤謬に対しては、啓導措置(警告、是正要求等)をし、誤謬のある場合は、過去の財務諸表を遡及して再作成するものの、2018会計年度第3四半期、又は事業報告書上財務諸表に誤謬修正を反映する場合は、別途措置を行わない予定です。

(3) 監督指針による財務諸表の再作成により営業損失が増加して管理対象に含まれる可能性が増加した企業に対しては、現行技術特例上場企業要件に準じて支援する予定であり、技術性があって研究開発費の比重が高い企業に対する上場維持要件の特例を今年中に備えることにしました。

(4) 製薬・バイオ分野のように、産業特性等に対する特別な考慮が必要な部分の会計処理に対しては、金融当局、業界、会計法人及び学界等が参与して会計イシューを公論化し、合理的な解決方案を模索し、必要な場合は、会計基準の合理的な解釈範囲内で具体的な監督指針を備えて公表することにしました。

 

- 以上 -

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