- 2018年11月16日
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【韓国の会計・税務レポート】「株式会社等の外部監査に関する法律」の施行
会計の透明性を画期的に高めるため、2017年10月に全面的に改正された「株式会社等の外部監査に関する法律(以下、「新外監法」と言う)」が2018年11月から施行されます。今月から施行される新外監法は、外部監査対象から事後の会計監督に至るまで、外部監査制度全般にかけ変化の幅が大きく、制度別にもその施行時期が様々です。
以下では、今月から直ちに適用される新外監法の内容についてご紹介します。
1.外部監査人の選任期限の短縮
監査報告書の提出時期以前に監査人を選任することにして、監査人の独立性を高めました。従来は、監査人の選任期限が事業年度開始日より4ヶ月以内と一律的に適用されていましたが、事業年度開始日より45日以内と大幅に短縮されます。以下は、10月、11月、12月決算法人の2019事業年度に対する監査人の選任期限です。
区分 |
監査人の選任期限 |
10月決算 |
11月決算 |
12月決算 |
① 「商法」及び「金融会社の支配構造に関する法律」上監査委員会の義務設置会社(*) |
事業年度開始日以前 |
該当なし |
該当なし |
’18.12.31. |
② 外部監査対象に初めて該当する会社 |
事業年度開始日から |
’18.02.28. |
’19.03.31. |
’19.04.30. |
③ その他の会社(①、又は②に該当されない会社) |
事業年度開始日から45日以内 |
’18.12.15. |
’19.01.14. |
’19.02.14. |
(*) 「商法」によりますと、監査委員会の設置義務会社は、直近事業年度末資産総額が2兆ウォン以上の株券上場会社を言います。また、「金融会社の支配構造に関する法律」によりますと、①直近事業年度末資産総額が5兆ウォン(上場会社は2兆ウォン)以上の保険会社・与信専門金融会社・総合金融会社・金融投資会社、②資産総額7千億ウォン以上の相互貯蓄銀行が該当します。
短縮された選任期限内に監査人の選任手続きを終えなければならず、選任期限内に選任を完了しなかった場合は、監査人の指定措置を受けることになります。即ち、10月末決算の一般会社は2018年12月15日まで、監査委員会の設置義務対象となる12月末決算会社は2018年12月31日までに選任を完了しなければなりません。
2.外部監査人の選任手続上内部監視機構の役割の強化
以下の通り、監査人の選任権限が経営陣から監査(委員会)に移管され、「監査人選任時の遵守事項及び監査人候補の評価基準」の文書化及び監査人候補の対面評価義務等が新しく導入されます。
区分 |
現行 |
改正内容 |
監査人の選任権者 |
会社が選定した会計法人、監査班を、監査役の承認を得て監査人として選任 ‐ 但し、株券上場会社は、監査人選任委員会(監査委員会を含む)の承認 |
監査役、監査委員会が選定した会計法人、監査班を監査人として選任 ‐ 但し、監査委員会が設置されていない株券上場会社、大型非上場会社(直前事業年度末資産総額1千億ウォン以上の非上場株式会社)、金融会社は監査人選任委員会が承認 |
選任期間 |
株券上場会社は、3事業年度の監査人を同一監査人と選任 |
株券上場会社、大型非上場会社、金融会社は3事業年度の監査人を同一監査人と選任 |
遵守事項の文書化 |
新設 |
監査役、監査委員会は、①監査人の監査報酬、監査時間、監査に必要な人力に関する事項を文書化し、②監査報告書提出以降はこれに対する遵守可否を確認 |
監査人候補の評価基準の文書化及び対面評価 |
新設 |
①監査人候補の評価基準を文書化し、②これに基づいて対面評価を行い、③監査報告書提出以降は、監査人の合意事項の履行有無の評価結果等を文書化 |
3.職権指定の対象拡大及び指定手続きの改善
(1) 職権指定の対象拡大
公正なる外部監査の必要性の高い財務状態が悪化したり、或いは最大株主・代表理事の変更が頻繁な上場会社等を職権指定対象と拡大しました。職権指定の事由は以下の通りです。
区分 |
職権指定の事由(太字は株券上場法人にのみ適用) |
現行維持 |
①上場予定会社、②監査人未選任、③監理結果措置、④相互貯蓄銀行法上指定要請、⑤財務基準(負債比率過多)、⑥監理銘柄、⑦横領、背任の発生等 |
廃止 |
内部会計監理制度の運営不備 |
新設 |
①監査人が財務書評を代理作成した会社、②機関投資家である株主の指定要請、③監査時間が標準監査時間に顕著に達していない会社、④指定基礎資料の未提出、⑤財務基準(3年連続で営業損失、負の営業キャッシュ・フロー、利子補償倍率1未満)、⑥過去3年間最大株主(2回)、代表理事(3回)変更、⑦投資注意喚起銘柄等 |
(2) 指定手続きの改善
監査人の選任期限短縮等外監査法の改正及び会社の監査需要等を反映して指定手続きを改善しました。
1) 指定時期:監査人の選任期限短縮を勘案して、翌事業年度の監査人を指定して事前に準備する十分な時間を付与するよう、改正されました。
区分 |
従前の指定時期 |
改正された指定時期 |
|
事業報告書の |
早期 |
当該事業年度開始後4ヶ月 |
直近事業年度開始後 10ヶ月 |
その他 |
当該事業年度開始後6ヶ月 |
||
以外の会社 |
当該事業年度開始後7ヶ月 |
2) 指定期間:新しく導入される周期的指定との衡平性等のため、1事業年度に対してのみ指定していましたが、1~③事業年度に細分化して指定できるよう、改正されました。
区分 |
従前の指定時期 |
改正された指定期間 |
周期的指定対象会社(*) |
1事業年度 |
連続3事業年度 |
同一な外監法違反(**)で |
連続2事業年度 |
|
以外の会社 |
1事業年度 |
(*) 株券上場会社、直近事業年度末の資産総額1千億ウォン以上の所有・経営未分離非上場会社
(**) 監査人未選任、監査人選任手続き違反、監査前財務諸表未提出等
3) 再指定要請:会社の大型会計法人に対する監査需要を反映し、指定監査による負担緩和のため、他鑑査人に再指定を要請できる事由を拡大しました。
区分 |
再指定事由 |
現行維持 |
①公認会計士法上の職務制限、又は倫理規定上独立性毀損自由に該当する場合 ②連結支配従属会社間で同一監査人を選任する場合 ③回生手続き進行中の会社が、裁判所の選任許可した監査人に指定要請する場合 ④外国人投資企業がその出資条件で監査人を限定する場合 |
廃止 |
単純再指定 |
新設 |
①指定を受けた会計法人が属する集団より、上位集団の会計法人の指定を要請する場合 ②指定監査人が会社に過渡な監査報酬を要求する場合 |
- 以上 -