- 2013年11月14日
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【韓国の会計・税務レポート】有価証券譲渡所得
外国法人や非居住者(以下、「外国法人等」という)が、内国法人が発行した有価証券*を譲渡することにより発生する所得は有価証券譲渡所得に該当します。有価証券譲渡所得は、韓国税法上、外国法人等が国内の事業場の有無と、譲渡対象有価証券の種類及び取引方式等により、韓国内源泉所得対象に該当するかが異なります。
* 有価証券とは、財産的利益を得られる全ての種類の有価証券で、株式・出資証券、債券等を言います。
今回は、外国法人等が、内国法人の発行した有価証券を譲渡する場合、韓国の税法上考慮すべき事項について説明します。
1. 有価証券譲渡所得の課税基準
外国法人等の有価証券譲渡所得の課税基準は以下の通りです。
区分 |
譲渡者 |
課税可否 |
株 式・ |
国内事業場のある外国法人 |
課税 (証券市場を通した株式譲渡を含む) |
国内事業場のある非居住者 |
課税 (証券市場を通して譲渡する場合で、譲渡日が属する年度及びその直前5年間継続して25%未満の持分率を所有した場合は除く) |
|
国内事業場のない外国法人等 |
||
その他 |
国内事業場のある外国法人等 |
課税 |
国内事業場のない外国法人等 |
内国法人、居住者、又は外国法人等の国内事業場に譲渡する場合は課税 |
但し、外国法人等が韓国と租税条約を締結した国家の居住者である場合は、上記の課税基準に優先して当該国家との租税条約により非課税・免除規定の適用を受けることができます。
参考までに、外国法人等が日本居住者である場合は、日韓租税条約によって、その外国法人等が内国法人の発行した株式・出資証券の譲渡により得られた利得は日本で課税されるのが原則です。但し、外国法人等及びその特殊関係者が、譲渡取引が発生した課税年度中に株式発行法人の発行株式総額のうち25%以上を所有し、譲渡する株式が株式発行法人の発行株式総額のうち5%以上の場合は韓国で課税されます。
2. 有価証券譲渡取引に関連する税金
外国法人等が内国法人の発行した有価証券を譲渡する取引で、株式譲渡者の立場では有価証券譲渡所得に対する法人税(又は所得税)及び証券取引税が発生する可能性があり、株式譲受者の立場では寡占株主のみなし取得税が発生する可能性があります。これに対する具体的な内容は以下の通りです。
(1) 有価証券譲渡所得に対する法人税(又は所得税)
外国法人等に源泉徴収対象となる有価証券の譲渡代価を支払う者、即ち、株式譲受者は、実際にその譲渡代価を支払う際に外国法人等より法人税(又は所得税)を源泉徴収し、その日が属する月の翌月10日までに株式譲受者の所在地管轄税務署に当該税額を申告・納付しなければなりません。但し、証券会社を通して有価証券を譲渡する場合は、当該証券会社源泉徴収義務者となり、株式譲受者が国内事業場のない外国法人等である場合は、株式発行法人所在地の管轄税務署に源泉徴収税額を申告・納付しなければなりません。
有価証券譲渡所得に対する源泉徴収税額は、①有価証券譲渡価額の11%(地方所得税を含む)相当額と、②譲渡差益(譲渡価額-取得価額及び譲渡費用)の22%(地方所得税を含む)相当額のうち、少ない金額です。但し、その取得価額と譲渡費用が確認されていない場合は、①の方法により算定します。
(2) 証券取引税
外国法人等も居住者・内国法人と同様に有価証券を譲渡する場合、証券取引税を納付しなければなりません。一般的に証券市場で取引される上場株式の場合は、証券会社が証券取引税を株式譲渡者より源泉徴収して申告・納付し、場外取引される上場株式及び非上場株式の場合は、株式譲渡者が直接証券取引税を申告・納付します。但し、株式譲渡者が国内事業場のない外国法人等である場合は、株式譲受者が株式譲渡者より証券取引税を源泉徴収して申告・納付します。
証券取引税の納税地は、源泉徴収義務者が国内事業場を有している外国法人等である場合は、その国内事業場所在地の管轄税務署であり、国内事業場を有していない外国法人等の場合は、株式を発行した法人の本店、又は主事務所の所在地管轄税務署です。
取引対象株式及び取引方法による証券取引税率は以下の通りです。
株式類型 取引方法 |
上場株式 |
非上場株式 |
農漁村特別税 |
有価証券市場 |
0.15% |
– |
0.15% |
コスダック市場 |
0.3% |
– |
– |
場外取引 |
0.5% |
0.5% |
– |
源泉徴収義務者(証券会社である場合は除く)は、株式の譲渡価額に上記の税率を適用して算定した証券取引税を譲渡日が属する四半期の末日より2ヶ月以内に管轄税務署に申告・納付しなければなりません。
(3) 寡占株主のみなし取得税
寡占株主のみなし取得税は株式譲受者と関連した税金で、韓国税法では法人(上場法人は除く)の株式を取得することによって株式譲受者が当該法人の寡占株主となった際に、当該法人の取得税課税対象資産を取得したこととみなされます。
ここでの寡占株主とは、株主、又は有限責任社員1人とその特殊関係者が所有している株式の合計額が当該法人の発行株式総額の50%を超過する者を言います。
寡占株主となった株式譲受者は、取得税課税対象資産の総価額に取得税率2.2%(農漁村特別税を含む)を適用して算定したみなし取得税を、当該株式を取得した日より30日以内に管轄税務署に申告・納付しなければなりません。