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【韓国の会計・税務レポート】株式譲渡に対する譲渡所得税の申告納付

今回は、日本法人が数回に渡って円建てで取得した韓国法人(非上場法人)の株式を譲渡し、その譲渡対価を円建てで分割して回収する場合の取得価額と譲渡価額との算定方法、源泉徴収時期別源泉徴収方法及び源泉徴収不誠実加算税についてご紹介致します。

一度に取得した株式を一度に全て譲渡する場合は、取得価額と譲渡価額の算定方法について、争点が発生する余地はないと考えられます。しかし、数回に渡って取得した株式の場合は、どのような評価方法を適用するかにより、1株当りの取得価額が変動する可能性があります。また、数回に渡って譲渡対価を回収する場合、譲渡日をいつにするかによって適用される為替レートが変わるため、譲渡価額も変動する可能性があります。

 

以下では、株式譲渡所得に対する日韓租税条約と韓国の法人税法の関連規定を調べ、取得価額と譲渡価額の算定方法等について説明します。

 

1.日韓租税条約と韓国の法人税法の関連規定

日韓租税条約第13条第2項(寡占株主の株式に対する課税原則)によると、日本法人(譲渡者)で韓国法人が発行した株式(譲渡株式)を譲渡する場合、その譲渡が下記の全てに該当する場合は韓国で課税されます。

① 所有比率:譲渡者が所有した株式の比率が発行済み株式の25%以上の場合

② 譲渡比率:譲渡株式の比率が発行済み株式の5%以上の場合

日韓租税条約では、株式譲渡所得に対する一般的な課税原則のみを提示しています。従って、具体的な申告納付方法は、韓国の法人税法に従わなければなりません。法人税法第98条第1項の本文によると、譲渡者が株式を譲受者に直接譲渡する場合、譲受者が源泉徴収義務者となり、譲渡対価を支払う際に源泉徴収した後、源泉徴収日が属する月の翌月10日までに申告納付しなければなりません。法人税法第98条第1項第5号により源泉徴収税額は以下の算式により計算されます。

源泉徴収税額=MIN[①、②]

① 譲渡価額方式:譲渡価額×11%(地方所得税込み)

② 譲渡差益方式:譲渡差益(譲渡価額-取得価額-費用)×22%(地方所得税込み)

 

2.取得価額の算定方法

法人税法基本通則92-0-3(有価証券譲渡所得の計算方法)第2項では、「外国法人が外貨金額を基準に内国法人が発行した有価証券を取得するか、或いは譲渡した場合、有価証券譲渡所得は譲渡価額、又は取得価額をウォン建てに換算した金額で計算する」と規定しています。即ち、譲渡者である日本法人の帳簿に取得価額が円建てで計上されている場合、株式の取得価額は取得日の為替レートを適用してウォン建てに換算しなければなりません。

韓国の法人税法施行令第75条では、株式の評価方法として総平均法と移動平均法の2つの方法のみを規定しています(日本の法人税法施行令第119条の2でも1株当りの取得価額は移動平均法、又は総平均法により算出します)。また、韓国の法人税法第98条第1項第5号の但書及び同法施行令第138条によると、外国法人の有価証券譲渡所得を計算する際、外国法人が取得価額が異なる同一銘柄の有価証券を保有している場合、譲渡価額から控除する取得価額は移動平均法に準じて計算することと規定されています。

日本法人が円建てで取得した韓国法人の株式を譲渡する場合、その取得価額は取得日の為替レートと移動平均法により算定しなければなりません。

 

3.譲渡価額の算定方法

同じく、譲渡価額が外貨建ての場合も、上記の法人税法基本通則92-0-3により譲渡日の為替レートを適用して換算しなければなりません。

ここで、譲渡日に対する判断は資産の販売損益等の帰属時期を規定している法人税法施行令に従わなければなりません。法人税法施行令第68条第1項第3号によると、株式の譲渡日は代金清算日、株式引渡日、又は名義書換費のうち、早い日になります。

例えば、株式譲渡契約が2018年3月31日に締結され、譲渡対価が数ヶ月に渡って分割して支払われる場合を仮定してみます。① 仮に、契約締結日である3月31日に株式を引渡すか、名義を書換えて株主の権利が即時に移転される場合、契約締結日である3月31日の為替レートを適用して譲渡価額を計算することになります。一方、② 株式引渡や名義書換が残金支払日以降に行われる場合は、残金支払日の為替レートを適用して譲渡価額を計算します。

即ち、日本法人が韓国法人の株式を円建てで譲渡する場合、その譲渡価額は譲渡日の為替レートにより算定しなければなりませんが、譲渡日は契約条件により変動します。一般的に株式引渡や名義書換は、残金支払日又はそれ以降に行われるため、残金支払日の為替レートにより換算する場合が多いと考えられます。

 

4.源泉徴収時期別の源泉徴収方法

譲渡対価を分割して支払う場合、分割支払日が源泉徴収時期になります。

上記「3.譲渡価額の算定方法」の例で、①の場合、契約締結日の為替レートにより譲渡価額と譲渡差益を計算できるため、譲渡価額方式と譲渡差益方式のうち源泉徴収税額が少なく計算される方式により源泉徴収税額を申告納付します。この場合は、分割支払額に契約締結日の為替レートを適用します。一方、②の場合は、残金支払日までは譲渡価額と譲渡差益を確定することができないため、一旦分割支払日の為替レートで換算した分割支払額に対し11%で源泉徴収し、譲渡価額が確定する残金支払日に源泉徴収税額を確定した後、確定した源泉徴収税額から既納付した源泉徴収税額を減算する精算手続きを経なければならないと考えられます。仮に、既納付した源泉徴収税額が確定された源泉徴収税額を超過する場合、その超過金額は還付を受けることができます。

 

5.源泉徴収不誠実加算税

源泉徴収税額を譲渡対価の実際支払日(分割支払日)が属する月の翌月10日までに未納付・過少納付した場合は、下記の算式により計算された加算税(①と②の合計)を追加で納付しなければなりません。この場合、その加算税は未納付・過少納付した税額の10%を限度とします。

① 未納付・過少納付税額×3%

② 未納付・過少納付税額×納付期限の翌日から自主納付日までの期間×0.03%

 

 

- 以上 -

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