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【韓国の会計・税務レポート】特許使用料に対する最近の韓国での争点

2016年12月9日、ソウル行政裁判所(第1審裁判所)は、アメリカ法人(NTP:1992年アメリカで設立された特許管理専門会社)が国税庁を相手に源泉徴収された法人税(約22億ウォン)の返還を請求した訴訟で、NTPに軍配を上げました。その後、2017年に租税審判院に対して同争点による数件の租税不服がなされましたが、租税審判院では、相次いで納税者の審判請求が棄却されています(租審2017中2917、2017.10.11;租審2017西2678,2017.09.05;租審2017西2688,2017.08.31;租審2016中3766,2017.07.05外)。納税者が訴訟を起こすためには、まずは租税審判院を経なければならないため、租税審判院で棄却された事件は、全て訴訟が進行していると見ることができます。従って、従前の最高裁判所の判例(最高裁判所2014.11.27宣告、2012ヅ18356判決)のように納税者が勝訴した事例があるため、アメリカ法人が韓国で得る特許使用料に対して課税できない場合、相当の税収損失が発生する恐れがあります。

以下では、2016年12月9日の判決、租税審判院の棄却の根拠及び日本での特許使用料に対する課税について説明します。

まず、2016年12月9日の判決の経緯及び結論は、下記の通りです。

2010年7月、NTPはサムスン電子とLG電子が自社の特許を侵害したとし、アメリカで特許権侵害禁止及び損害賠償訴訟を起こし、この事件は相互和解で決着しました。サムスン電子とLG電子は、合意の代価としてNTPに約148億ウォンを支払い、15%税率を適用した約22億ウォンを源泉徴収税額として納付しました。これに対し、NTPは不当な源泉徴収と主張し、訴訟を起こしました。裁判部は、特許権属地主義に従う韓米租税条約上、特許が登録されない韓国では特許権の侵害が発生しないと結論を下し、上記特許使用料も国内源泉所得とみなすことができないと判決を下しました。

しかし、租税審判院では、法人税法第93条第8号で、「当該特許権等が国外で登録されており、国内で製造及び販売等に使用された場合は、国内特許登録可否に関係なく、国内で使用されたこととみなす」と規定しているため、争点特許使用料は、韓国内源泉所得に該当すると判断しました。

即ち、請求法人が、特許権の属地主義原則上、特許実施に対する権利は特許権が登録された国の領域内でのみ効力が及ぼされるものであるため、韓国内で登録されていない特許権に対して支払われた所得は、韓国内の源泉所得に該当しないと主張しました。しかし、租税審判院では、韓米租税条約第6条第3項では、「使用料は、ある締約国内の同財産の使用、又は使用する権利に対して支払われる場合のみ、同締約国内に源泉をおいた所得と取扱われる」と規定しており、これは、使用地基準を明示しているだけであるため、使用料所得に対する判断基準は、国内税法に従わなければなりません。従って、法人税法第93条第8号で「当該特許権等が国外で登録されており、国内で製造・販売等に使用された場合は、国内登録の有無に関係なく国内で使用されたものとみなす」との規定により、争点特許使用料は韓国内源泉所得に該当すると結論を下しました。

日本の過去事例と現在の特許使用料に対する源泉徴収を見てみますと、

日本法人がアメリカ法人に支払った特許侵害に対する和解金が、日本の国内源泉所得に該当するかどうかが争点となった事件がありました。1992年第1審裁判所では、特許権はアメリカ特許権の代価であるため、日本の国内源泉所得ではないと判決を下しており、第2審裁判所では製造代価と販売代価とが明確に区分できない場合は、裁量的按分は認められないと判決を下しました。第2審の判断根拠は、第1審とは異なりましたが、結果的に原審判断が維持されました。その後、2004年6月最高裁判所では、和解金はアメリカでの特許使用料に該当するため、日本の国内源泉所得には該当しないと判断し、課税庁の上告を棄却しました。即ち、最高裁判所は、第1審と同じく、アメリカで登録された特許権に対する権利の侵害であり、使用地は特許権の登録地となるため、日本の国内源泉所得に該当しないと判断しました。

日本法人がアメリカ法人に支払う使用料が日本の国内源泉所得に該当するかどうかについては、これ以上は争点にならないものと見ることができます。日本の国内法では、源泉地国課税原則、いわゆる、使用地基準を採択していますが、アメリカ(2004年)との改正された租税条約では、使用料所得に対して居住地国課税原則を採択したことにより、日本法人はアメリカ法人に源泉徴収をせず使用料を支払うこととなっています。また、日本とイギリス(2006年)、フランス(2007年)及びドイツ(2016年)等との租税条約においても、使用料に対してはアメリカの租税条約と同様に居住地国課税原則を採択しています。

前述した通り、アメリカでのみ登録された特許権に対する使用料関連の租税紛争が続いているため、韓国の最高裁判所で最終的にどのような判断を下すか注目を浴びています。一方、1979年に発効された韓国とアメリカの租税条約は、両国間の投資及び経済交流をより一層促進するため、また、        脱税及び租税回避行為をより適切に防止するために、早急に改正されるべきではないかと考えます。

 

- 以上 -

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