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【韓国の会計・税務レポート】移転価格税制について(1)

韓国の税法では、韓国の事業者が国外特殊関係者と取引を行う場合、その取引価格に一定の規制を設けることで、韓国に帰属すべき課税所得を国外に移転させることを防ぐ移転価格税制を定めています。

今月及び次月は、韓国の税法で規定されている移転価格税制について説明します。

1. 移転価格税制の概要

(1) 移転価格税制の意義

移転価格税制とは、内国法人・居住者、又は外国法人の国内事業場(以下、「内国法人等」という)が国外特殊関係者との国際取引時に正常価格より高い代価の支払、又は低い対価を受けて課税所得を国外に移転させる場合、課税当局は内国法人等の租税回避の意図の有無を問わず、両当事者間の取引価格を否認し正常価格を基準に課税することにより、自国の課税権を保護し、国際的な租税回避を防止する制度を言います。


(2) 国外特殊関係者の範囲

国外特殊関係者の範囲は、持分所有関係、実質的支配関係及び第三者による実質的支配関係に基づいて決定されます。

国外特殊関係

一般的要件

持分所有関係

①    外国株主が内国法人等の議決権のある株式の50%以上を直・間接的に所有する場合の外国株主と内国法人等との関係

②    内国法人等が他の外国法人株式の50%以上を直・間接的に所有する場合、内国法人等と外国法人との関係

③    内国法人等の株式の50%以上を直・間接的に所有している者が第三の外国法人株式の50%以上を直・間接的に所有している場合、内国法人等と第三の外国法人との関係

実質的支配関係

内国法人等と外国法人間の関係において、資本の出資関係、財貨・役務の取引関係、資金の貸付等により所得を調整できる共通の利害関係があり、取引当事者の一方が次のいずれか1つの方法によって、他方の事業方針の全部、又は重要な部分を実質的に決定できる場合

• 他方の法人の代表役員、又は役員の半数以上が一方の法人の役員、又は従業員の地位にある

• 他方が、事業活動の50%以上を一方との取引に依存している

• 他方が事業活動に必要な資金の50%以上を一方より借入、又は支払保証を介して調達している

• 他方が一方より提供された無体財産権に50%以上を依存して事業活動を営んでいる

第三者による実質的支配関係

内国法人等と外国法人間の関係で資本の出資関係、財貨・役務の取引関係、資金の貸付等により所得を調整できる共通の利害関係があり、第三者が取引当事者双方の事業方針を実質的に決定できる場合

• 内国法人等の株式の50%以上を直・間接的に所有する一方と、内国法人等と上述の実質的支配関係のある他方との関係

• 外国法人が株式の50%以上を直・間接的に所有する一方と、外国法人と上述の実質的支配関係のある他方との関係

• 企業集団に属する系列会社である一方と、その企業集団に属する他の系列会社が、株式の50%を直・間接的に所有する他方との関係

• 第三者が取引当事者双方の事業方針に実質的支配関係を持つ場合、その取引当事者双方間の関係

 

(3) 正常価格とは

正常価格とは、内国法人等が国外特殊関係者ではない者との通常の取引で適用されると判断される価格をいいます。

 

2. 正常価格の算出方法

国外特殊関係者との取引で適用する正常価格を算出する方法は、下記の6つの方法があります。次の方法の中で、最も合理的ないずれか1つを選択して適用します。

(1) 比較可能第三者価格法(Comparable Uncontrolled Price Method)

特殊関係者取引と類似した取引状況において、特殊関係のない独立した事業者間の取引価格を正常価格とみなす方法です。この方法を適用するためには、特殊関係者との取引状況、特殊関係のない独立した事業者間の取引状況での製品、取引市場、取引時期及び取引条件等にかなりの類似性がなければなりません。

(2) 再販売価格法(Resale Price Method)

特殊関係者間での資産を取引した後、取引の一方である資産の購買者が、特殊関係のない者に再びその資産を販売する場合、その販売価格からその購買者の利潤とみなせる金額を差し引いた価格を正常価格とする方法です。

この方法は、国外特殊関係者より商品を輸入して国内で再販する取引で最も効果的に適用できる方法ですが、商品を購買した後に商品の価値を著しく増加させるため、再販する場合には適用できません。

(3) 原価加算法(Cost Plus Method)

特殊関係取引で資産の製造・販売や役務の提供過程で発生した原価に、資産販売者や役務提供者の利潤とみなせる金額を加えた価格を正常価格とする方法です。

この方法は、主に韓国内の製造業者が海外特殊関係企業及び第三者に製品を販売する場合に適用される方法です。

(4) 利益分割法(Profit Split Method)

特殊関係取引の当事者が、特殊関係取引により実現した取引純利益を合理的な配賦基準によって測定された取引当事者間の相対的貢献度により配賦し、配賦された利益を基礎に算出した取引価格を正常価格とする方法です。相対的貢献度は、特殊関係のない独立した事業者間の取引時に一般的に適用されると判断される配賦基準により測定し、取引純利益を相対的貢献度により配賦する際には、取引形態別に取引当事者の適切な基本収益を優先配賦する場合を含みます。

(5) 取引純利益率法(Transactional Net Margin Method)

特殊関係取引の一方の当事者が、特殊関係のない者と行った取引で実現した取引純利益率、又はお互いに特殊関係のない第三者間で行われた取引で実現した取引純利益率を基礎として算出した取引価格を正常価格とみなす方法です。

取引純利益率方法の種類は以下の通りです。

• 取引純利益の売上に対する比率

• 取引純利益の資産の対する比率

• 取引純利益の売上原価及び営業費用に対する比率

• 売上総利益の営業費用に対する比率(Berry Ratio)

• その他合理的であると認められる取引純利益率

(6) その他の取引の実質及び慣行に照らして合理的であると認められる方法

但し、この方法は、上記の1~5の方法で正常価格を算出することができない場合にのみ適用されます。

 

 

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