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韓国の移転価格税制

移転価格制度は、多国籍企業が国外特殊関係者との国際取引を通じて課税所得を他国に移転させることを規制する制度です。韓国では国際租税調整に関する法律(以下、国租法)で移転価格制度を規定しています。

 

今回は、韓国の移転価格税制の沿革、概要及び正常価格算出方法について説明します。

 

 

1. 韓国の移転価格税制の沿革

 

韓国の場合、1980年代に入って国際化開放による多国籍企業の国内への進出が急激に増加しており、移転価格操作を通した国内租税負担を不当に減少させる事例が増加しました。このため、1998年12月31日付けで法人税法及び所得税の不当行為計算否認規定を改正し、移転価格課税制度を導入しました。

また、1995年OECD財政委員会で、『多国籍企業と租税行政のための移転価格指針』を発表しましたが、韓国でも国外特殊関係者間の所得移転行為を規制する別途の課税体系の必要性が高まり、1995年12月6日に国際租税調整に関する法律が制定されました。

 

2. 移転価格税制の概要

 

韓国の移転価格税制である国租法第4条によると、居住者などが国外関連者との国際取引を行う際に取引価格が“正常価格(国外関連者ではない者との通常の取引に適用されるか或いは適用されると判断される価格)”を超過するか或いは達しない場合には、課税当局が居住者の課税標準及び税額を正常価格を基準にして決定または更正することができるように規定しています。

 

なお、法人税法及び所得税法の不当行為計算否認規定は租税回避を前提にしますが、移転価格は租税回避を前提条件としていません。即ち、租税回避目的とは関係なく、国外特殊関係者との国際取引が正常価格に達していないか、或いは超過する場合は移転価格税制が適用されます。

 

3. 正常価格算出方法

 

正常価格とは、当該居住者などが国外特殊関係がない者と行った国際取引で形成される通常的な価格を言いますが、当該正常価格を正確に決定してそれを立証することは現実的に不可能です。従って、国租法第5条と同法施行令第4条では以下の方法によって正常価格を算定するように規定しています。

 

(1) 比較可能第三者価格法(Comparable Uncontrolled Price Method、CUP)

 

CUPは、居住者と国外特殊関係者間の国際取引において、当該取引と類似する取引状況で特殊関係のない独立した企業間の取引価格を正常価格とみなす方法です。

 

CUPを適用するためには分析対象取引と比較対象取引間で非常に高い水準の同一性が要求されます。同一性を判断するに当たって考慮すべき事項は以下の通りです。

 

– 製品の同一性(品目、規格、仕様、数量)

– 取引時期の同一性(季節の影響による価格差の考慮)

– 取引市場の同一性(市場水準、地理的同一性)

– 取引条件の同一性(代金支払条件、運送条件、割引政策)

– その他比較可能性に影響を与える要素

 

(2) 再販売価格法(Resale Price Method、RPM)

 

RPMは、居住者と国外特殊関係者が資産の取引を行った後、取引の一方である当該資産の購入者が特殊関係がない者に再びその資産を販売する場合に、その販売価格から当該購入者の通常利潤とみなされる金額を減算して算出した価格を正常価格とする方法です。RPMは、一般的に生産者の関係会社から製品を仕入れ追加工程なく第三者に販売する場合に使用される方法です。

 

RPMの適用において購入者の通常利潤は、“再販売価格×比較対象取引の売上総利益率”で計算します。

 

 

 

(3) 原価加算法(Cost Plus Method、CPM)

 

CPMは、居住者と国外特殊関係者間の国際取引において、資産の製造・販売または役務の提供過程で発生した原価に資産の販売者または役務の提供者の通常の利潤とみなされる金額を加算して算出した価格を正常価格とする方法です。

CPMは追加工程などで付加価値を相当水準まで増加させ、国外特殊関係者に販売する場合に使用される方法で、製造原価に適正利潤を加算することによって正常価格を算定する方法です。

 

CPMの適用において販売者の通常利益は、“購入・製造などの原価×(比較対象取引の売上総利益÷比較対象取引の売上原価)”で計算します。

 

(4) 利益分割法(Profit Split Method、PSM)

 

PSMは、居住者と国外特殊関係者間の国際取引において、取引双方が共に実現した取引純利益を以下に定める配賦基準により測定された取引当事者間の相対的貢献度により配賦し、配賦された利益に基づいて算出した取引価格を正常価格とみなす方法です。この場合、相対的貢献度は類似する状況で特殊関係のない独立した企業間における取引時に、一般的に行われる貢献度によって測定します。

 

– 資産の購入・製造・販売または役務の提供のために支出した、或いは支出する費用

– 資産の開発または役務の提供のために所要された資本的支出額、使用された資産総額または負担したリスクの程度

– 各取引段階で果たされた機能の重要度

– その他測定可能な合理的な配賦基準

 

(5) 取引純利益率法(Transactional Net Margin Method、以下、TNMM)

 

TNMMは、居住者と国外特殊関係者間の国際取引において居住者が特殊関係のない者と行った取引のうち、当該取引と類似する取引にて実現された、以下に定める取引純利益率に基づいて算出した取引価格を正常価格とみなす方法です。但し、当該取引と類似する取引を特殊関係のない者と行っていない場合には、特殊関係のない第三者間の取引のうち、当該取引の条件と状況が類似する取引の取引純利益率が使用できます。

 

– 取引純利益の売上に対する比率

– 取引純利益の資産に対する比率

– 取引純利益の売上原価及び販売費及び一般管理費に対する比率

– 売上総利益の営業費用に対する比率

– その他合理的であると認められる取引純利益率

 

なお、2009年までは伝統的取引接近方法(CUP、RSM、CPM)で信頼性のある正常価格を算出することができない場合に限ってPSM、TNMMを適用することができましたが、2010年に正常価格算出方法の適用順序が廃止されたことによって、最も合理的な方法を選択して適用することになりました。

 

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