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個人に対する課税、又は納税の基本となる基準:所得税法上の納税義務者

年明けの韓国の大手マスコミでは、税金に関連した面白いニュースが発表されました。韓国の「銅の王様」と呼ばれている“チャ・ヨンギュ”氏が申請した課税前適否審査でチャ氏の主張が容認され、国税庁が賦課した税金は課税できないと結論が下されたためです。これにより、カザフスタンの銅鉱産を開発して約1兆ウォン(約680億円)を稼いだチャ氏は、国税庁より課せられた約1,600億ウォンの税金を一銭も納めなくてすむようになりました。

チャ氏は大学で経営学を専攻した後、三成物産で勤務していた平凡な会社員でしたが、三成物産がカザフスタンの最大銅会社であるカザクムスの委託経営を任せられ、カザフスタンの支店長として人事発令を受けます。また、破産直前まで追い込まれていたカザクムスを世界屈指の銅製錬業者として再起させ、共同代表の位置にまで上がりました。その後、三成物産がこの事業から撤回する際にチャ氏はカザクムスの株式を大量に引き受け、2005年に会社をロンドン証券取引所に上場させました。ちょうど世界銅市場の好況の勢いに乗って、会社は時価総額100億ドルに上る大企業に成長し、チャ氏は07年、会社株式のすべてを14億米ドル(約1,070億円)で売却し、同年、米国フォーブスが選定した世界1,000大富豪の754位に上がりました。

これに対し韓国国税庁は、昨年5月からチャ氏が株式売却により稼いだ1兆ウォンに対する域外脱税疑惑に対して税務調査を実施し、その結果1,600億ウォンの税金を追徴しました。特に、この過程で国税庁は、チャ氏が国内居住者であることを明かすための証拠を収集するのに総力を注いでおり、チャ氏も調査過程で持続的に香港、イギリスなどの外国に居住しながら自ら韓国内居住者でないことを主張したと伝えられております。もし、チャ氏が韓国税法上の居住者、すなわち無制限納税義務者でなければ、韓国の源泉所得ではない以上、国税庁は課税することができないためでしょう。結局、チャ氏は国税庁の結果に不服を申し立て韓国税法による課税前適否審査を審査し、今年の年明けに開かれた審査委員会ではチャ氏の国内居住日数が1年に約1ヶ月であることなどを考慮すると、韓国税法上居住者に該当しないと判断されました。

今回の課税処分の取り消し決定では、居住者の概念が最も重要な影響を及ぼしました。これは、韓国の所得税法による無制限(国内及び国外所得を問わない)納税義務を負う最も重要な基準です。韓国税法の定義によりますと、居住者とは、国内に住所をおくか、あるいは1年以上国内に居所をおいている個人を意味するもので、ここで言う住所とは、生計を共にする家族および国内に所在する資産の有無などの客観的事実により判定するため、一般的に自分が住んでいる居住地の概念とは差があります。また、居所とは、住所地以外の場所の中で、相当期間にかけて居住する場所で、生活の拠点と呼ぶには至らない場所を指すと規定しています。

すなわち、税法により納税義務者となる居住者は、一般的にわれわれが思う“どこの国の国民”とは異なる概念で、個人の国籍と外国永住権の取得とは関連がないとも言えます。ただし、現在韓国の所得税法上の居住者とは、上記基準でわかるように、住所や居所を判断するにおいてチャ氏の事件のように国税庁と納税者間の見解の食い違いが発生し得る素地を常に残しています。よって、韓国では税法専門家を中心に納税者に対する定義をより具体的に立法化しようという主張も継続的に提起されている状況です。

居住者に対する論議からもう少し発展していけば、外国人の場合には居住者と判定されたとしても、所得税法で定義するすべての所得に対し納税義務を負担することはありません。課税期間が終了する日より10年前から起算して、国内に住所をおくか、あるいは居所をおいた期間の合計が5年以下の居住者に対しては、課税の対象となる所得の中でも国外で発生した所得の場合は、国内で支払われたり、送金された所得に対してのみ課税しているからです。従って、自ら韓国で一定期間居住しながら経済活動をしている外国人であれば、自ら韓国税法による居住者に該当するか、またはいかなる所得に対し納付義務があるのかを確認する必要があると思われます。

 

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