- 2012年4月12日
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退職給付制度と関連した会計及び税務(1)
韓国の退職給付制度は、勤労者退職給与保障法に基づき制定されており「一般退職金制度」と「退職年金制度」があります。
今回は退職給付制度の設定対象者、一般退職金制度の概要及び関連する会計・税務処理について説明します。退職年金制度については次号で説明します。
1. 退職給付制度の設定対象者
使用者は退職する勤労者に給与を支払うために、退職給付制度のうち1つ以上の制度を設定しなければなりません。設定金額は常時勤労者数5人を基準として、以下の通りに区分されます。
常時勤労者数 | 設定区分 |
5人以上 | 当然設定 |
5人未満 | 2012年12月 31日までは退職金の50%、
2013年からは全額設定
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2. 一般退職金制度
一般退職金制度とは、会社が退職する勤労者に継続勤労年数1年に対して30日分以上の平均賃金を支払う制度をいいます。
(1) 最低退職金の算定方法
勤労者退職給付保障法で規定している最低退職金は、継続勤労年数1年に対し30日分の平均賃金を乗じて計算した金額です。これを算式で表示すると以下のようになります。
退職金=継続勤労年数(在職日数/365)×30日分の平均賃金 |
(2) 退職金の支払時期
原則として、 支給事由が発生した日から14日以内に、使用者は退職勤労者に退職金を支払わなければなりません。ただし、特別な事情がある場合は当事者間の合意により期日を延長することができます。
(3) 退職金中間精算制度
退職金中間精算制度とは、勤労者が希望する場合入社以後の退職金を中途に支払い、その時から改めて退職金を計算する制度です。現行法律上では、当該制度の利用に如何なる制限もないため勤労者の意思のみで退職金を予め精算して支払うことができ、退職給付制度が老後生活保障制度として十分に活用されていない場合が多くありました。そこで、2011年7月25日の法律改正によって、2012年7月26日以後からは勤労者が住宅購入などの一定事由により要求する場合にのみ退職金を中間精算して支払うことができるようにし、退職金制度の本来の趣旨を生かす様になりました。
(4) 退職給付引当金の会計処理
一般退職金制度を設定している会社は勤労者に支払うべき退職金相当額を退職給付引当金に計上しなければなりません。退職給付引当金に計上すべき金額は以下の通りです。
① 企業会計基準を採用する場合:会計年度末現在において、全役職員が一斉に退職する場合に支払うべき退職金相当額を退職給付債務として計上
② 国際会計基準を採用する場合:将来に役職員が退職する場合に支払うべき将来の退職給与を賃金上昇率、市場収益率などを考慮して退職給付債務と推定して計上
(5) 法人税法上の損金算入限度
1) 退職給付引当金の損金不算入
会社が企業会計基準に基づき退職給付引当金を100%設定したとしても、企業の倒産などの事由が発生した場合には役職員の退職給付の全額が保護されるわけではないため、退職給付推定額の一定率を限度として損金と認定しており、残りは退職年金などで社外に積立てた場合にのみ追加的に損金と認定しています。
社内に計上された退職給付引当金に対する損金算入限度額は以下の通りです。
損金算入限度額 = 退職給与の支払対象となる役職員に対して、当該事業年度に支払った総給与額 × 5%
累積限度額 = 事業年度末の退職給付推定額 × 一定比率(注)
(注) 退職給付引当金の積立限度比率
事業年度 | 比率 |
2010年中に開始する事業年度 | 30% |
2011年中に開始する事業年度 | 25% |
2012年中に開始する事業年度 | 20% |
2013年中に開始する事業年度 | 15% |
2014年中に開始する事業年度 | 10% |
2015年中に開始する事業年度 | 5% |
2016年中に開始する事業年度から | 0% |
上記の通り退職給付引当金の積立限度額が段階的に縮小される理由は、退職給与引当金の社内留保を減らし、退職年金への転換を誘導するためです。
2) 役員退職金損金算入限度額
使用者に対する支払退職金については税務上損金限度がないが、役員に対する支払退職金については税務上損金限度が設定されています。即ち、法人が役員に支払った退職給付のうち、下記の何れかに該当する金額を超過する金額は損金不算入となります。
① 定款に退職給付として支払う金額が定められた場合:定款に定められた金額
② 定款に規定がない場合:退職日より遡及して1年間に当該役員に支払った総給与額 × 10% × 勤続年数