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K-IFRSの導入及び法人税

韓国では、2011年より全ての上場企業に「K-IFRS(韓国版国際会計基準)」が強制適用されており、これにより法人税法の整備も必要となりました。

 

今回は、K-IFRSの導入により改正された法人税法の主要内容及び改正理由について説明します。

 

 

1. K-IFRS及び一般企業会計基準を法人税法上認められる会計基準に含める

 

韓国の法人税法では、法人の益金・損金の帰属事業年度及び資産・負債の取得及び評価に関し、企業会計基準を適用するか又は慣行を継続して適用している場合には、法人税法などで異なる規定がある場合を除いて企業会計基準又は慣行に従うものとされていますが、ここで企業会計基準とはK-GAAPを意味するものでした。

 

従って、K-IFRSの導入時に会計(K-IFRS)と税法(K-GAAP準用)との間に差異が発生し、税務調整が増加することになりました。

 

このため法人税法を改正し、2011年から税法で準用可能な企業会計基準にK-IFRSを含めることとなり、K-IFRSで作成された財務諸表も法人税法などで異なる規定がある場合を除いては、韓国の法人税法上認められるものとなりました。

 

 

2. K-IFRS導入企業の有・無形固定資産減価償却費の申告調整許容

 

K-IFRSでは有・無形固定資産の減価償却方法について、実務上では定額法を最も一般的な減価償却法と認定しており、これまで多くの企業が採用していた定率法は、事業の特性上機械装置などを購入した初期にその機械装置などを集中的に使用した事実を証明しなければ使用することができません。

 

従ってK-IFRSの導入により従来の定率法から定額法へ減価償却方法を変更する会社の場合、設備投資初期において減価償却費をこれまでより過少計上することになるため税負担が一時的に増加します。これは、従来の税法では有・無形固定資産減価償却費は決算上で計上した減価償却費のみ損金算入(決算調整)されていたためです。

 

この様な減価償却方法の変更により税負担が一時的に増加する企業の負担を緩和するため、2011年より減価償却費の損金算入は決算調整を原則とするものの、下記の通りに申告調整を許容することに法人税法が改正されました。

即ち、決算上で減価償却費を計上しなくても税務上の損金算入限度額の範囲にある金額は税務調整で損金算入できるようになりました。

 

① 申告調整対象資産:有形固定資産、非限定耐用年数無形固定資産

② 申告調整時の限度

– 2013年以前の取得資産:K-IFRS導入以前の決算上減価償却方法及び耐用年数を限度に損金算入許容

– 2014年以後の取得資産:税法上基準対象年数を限度に損金算入許容

 

 

3. 機能通貨導入企業の課税標準計算方法新設

 

K-IFRSにより機能通貨が導入される場合、営業活動が行われる主な経済環境の通貨としてウォン貨以外の通貨で財務諸表を作成することが可能になりましたが、税法上では認められないためウォン貨に換算しなければなりません。

 

これに伴い、機能通貨を導入した企業の課税標準算出方法に対する具体的な計算方法が新設されました。即ち、ウォン貨以外の機能通貨を採用した法人の場合、以下のいずれか1つの方法を選択して課税標準を計算することにしました(原則として一度選択すると変更不可)。

 

① 機能通貨を採用しなかった場合に作成する財務諸表を基準に課税標準を計算する方法

② 機能通貨で表示された財務諸表を基準に法人税課税標準を計算した後、期末為替レート又は平均為替レートを適用してウォン貨に換算する方法

③ BS項目は事業年度終了日現在における為替レート、PL項目は当該取引日の為替レート(特定項目に対しては平均為替レート)を適用してウォン貨に換算した財務諸表を基準にして課税標準を計算する方法

 

 

4. 貸倒引当金戻入益の益金算入繰延

 

K-GAAPでは売上債権の1%を貸倒引当金と設定することを許容したが、K-IFRSでは貸倒発生可能性についての客観的な証拠がない場合には貸倒引当金を積立ることができません。

 

従ってK-IFRS導入時において、従来設定していた1%の貸倒引当金を一時的に戻入しなければならず、これにより一時的に税負担が急増する問題が発生します。

 

これに伴い、2010年末税法改正により、2011年からK-IFRSの導入初年度に発生する貸倒引当金の一時戻入額の益金算入を繰延とする制度を新設しました。即ち、K-IFRSの導入により会計基準が変更される初年度に一時に戻入する貸倒引当金戻入額を益金不算入とし、2013年1月1日以後初めて開始される事業年度において益金算入とすることにしました。

 

 

5. K-IFRS導入企業の課税標準申告時の標準財務諸表提出義務化

 

従来、法人税課税標準申告時に財務諸表を添付資料として提出することとしていましたが、K-IFRS導入企業は国税庁が指定する標準財務諸表の提出を義務化しました。これはK-IFRSの場合、財務諸表項目分類が簡素化されたことを勘案したものです。

 

 

6. 棚卸資産評価差益の課税繰延(改正(案))

 

K-IFRSでは棚卸資産に対する会計処理方法の1つの後入先出法が認められないため、先入先出法や加重平均法に棚卸資産評価方法を変更しなければなりません。

 

従って、K-GAAPで許容していた後入先出法を適用していた石油、ガスなどの会社は、棚卸資産評価方法の変更により一時的に棚卸資産評価差益が発生し、税負担増加問題が発生しました。

 

このような問題を解決するため、2011年改正税法(案)ではK-IFRS導入により棚卸資産評価方法を後入先出法から他方法に変更した企業は、棚卸資産評価差益を5年間益金不算入とする案を推進しているところです。

 

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