- 2012年4月12日
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K-IFRSを適用した財務諸表の読み方
韓国は、今年から全ての上場企業、上場予定企業及び非上場金融機関などに韓国版国際会計基準(以下、「K-IFRS」という)が適用されています。
投資家などの財務情報利用者は、企業が公表した財務諸表を基礎資料として経済的意思決定を下すことになりますが、このような財務諸表がK-IFRSの導入により、その形式と構造が大きく変わることになりました。
以下ではK-IFRSの導入により変更された財務諸表の形式と構造などについて、既存の企業会計基準(以下、「K-GAAP」という)と比較して説明します。
1. 財務諸表の構成
① K-GAAP
K-GAAPでの財務諸表は、貸借対照表、損益計算書、資本変動表、キャッシュ・フロー計算書及び利益剰余金処分(欠損金処理)計算書で構成されます。
② K-IFRS
K-IFRSでの財務諸表は、財務状態表、包括損益計算書、資本変動表、キャッシュ・フロー計算書及び注記で構成されます。注記では各種財務諸表で表示された項目を具体的に説明又は細分化し、会社が財務諸表作成時に採用した会計方針などの重要情報を公表します。
2. 各種財務諸表の表示方法
(1) 財務状態表
財務状態表は一定時点における企業の資産、負債及び資本の残高を報告する財務諸表です。
① K-GAAP
K-GAAPでは詳しい財務状態の標準様式を規定しています。また、項目表示順序を資産、負債及び資本の順で規定しており、資産及び負債は流動性の高い項目より配列することと定めています。
② K-IFRS
K-IFRSでは財務状態表に表示される最小限の勘定科目のみを例示しており、詳細順序、形式などは規定していません。従って、資産及び負債を流動と非流動とで区分しても必ずしも流動性の高い項目から配列しなくても構いません。実際に、K-IFRSを適用した財務状態表で流動性の低い項目から流動性の高い項目順に配列した事例もあります。
(2) 包括損益計算書
包括損益計算書とは、一会計期間中に発生した全ての収益と費用を報告する財務諸表です。
① K-GAAP
K-GAAPでは損益計算書が財務諸表であり、包括損益は損益計算書の注記として公表されます。また、損益計算書の標準様式を詳しく規定しており、営業損益の区分表示を義務化しています。
② K-IFRS
K-IFRSでは包括損益計算書が財務諸表です。包括損益計算書は当期純損益とその他包括損益(*)とを1つの報告書で表示する方法と、それぞれに分けて2つの報告書で表示する方法があります。その他包括損益とは、収益項目と費用項目のうち、当期純損益を構成せず、直接財務状態表の資本として認識される項目です。また、K-IFRSでは営業損益の区分表示を義務化していません。
なお、K-IFRSでは企業の費用について性格別又は機能別分類方法のうち、1つの方法を選択して包括損益計算書を作成することができます。性格別分類とは、当期損益に含まれた費用をその性格(例:減価償却費、原材料購入費、従業員給与など)別に分類することです。機能別分類とは、費用を売上原価、物流原価、管理費などのように分類する方法です。費用を機能別に分類した場合には、費用の性格に対する情報を注記として公表しなければなりません。
(3) 資本変動表
資本変動表は一会計期間中に変動した資本の増加及び減少の内容を報告する財務諸表です。資本変動表において、K-GAAPとK-IFRSとは殆ど差異がありません。
資本変動表には下記の項目を表示しなければならず、資本変動表又は注記には当該期間中に株主に配当した金額及び1株当り配当金を表示しなければなりません。
当該期間の総包括損益
資本の構成要素別遡及適用や遡及再作成の影響
資本の構成要素別に当期純損益、その他包括損益、株主との取引(出資金の変動内容、配当など)
(4) キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書は企業のキャッシュ・フローの創出能力を提供する財務諸表です。
① K-GAAP
K-GAAPでは、受取利息、受取配当金及び支払利息は営業活動、配当金の支払は財務活動に分類してキャッシュ・フロー計算書を作成します。また、有価証券の取得及び処分に係るキャッシュ・フローは投資活動に分類します。
② K-IFRS
K-IFRSでは利息及び配当金の受取及び支払に関するキャッシュ・フローの分類を企業が選択できるようにする一方で、毎期継続して適用することとしました。また、短期売買目的で保有する有価証券や貸付債権は営業活動に分類することにしました。
(5) 注記
注記は財務諸表の本文に表示される項目を具体的に説明又は細分化し、財務諸表に対する追加的な情報を提供します。
K-IFRSでは、財務諸表の本文は簡略化されている反面、これを補充・説明する注記のページ数は多く増え、注記情報の重要性が増加しました。