- 2012年4月12日
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韓国に派遣された駐在員の勤労所得に対する課税(その2)
前回に続き、駐在員の勤労所得と関連して、韓国で賦課される所得税及び納税手続について説明します。今回は、勤労所得税の計算過程の詳細及び外国人勤労者に対する課税特例制度について説明します。
1.勤労所得税の計算過程の詳細
勤労所得税を計算する過程は次のとおりです。
勤労所得税 = [(1)給与等の総受領額 – (2)非課税所得 – (3)勤労所得控除 – (4)総合所得控除]×(5)総合所得税率 - (6)税額控除 |
(1) 給与等の総受領額
給与等の総受領額とは、勤労を提供することにより受ける給料、報酬、賃金、賞与、手当などと、これと類似した性質の給与、株主総会などの決議により賞与として受ける所得及び法人税法により賞与と処分された金額を言います。
なお、個人が負担すべき所得税を会社が代わりに負担する場合がたびたびありますが、会社が負担する所得税額も当該個人の勤労所得に該当するため、会社が負担する所得税相当額を個人の勤労所得に合算して申告しなければなりません。これをGross-up方式といい、個人に支払われた給与額を基準に総勤労収入金額を逆算する方式で計算して所得税額を計算します。
(2) 非課税勤労所得
非課税勤労所得には、代表的に以下のようなものがあります。
① 市内出張旅費の代わりに個人の自動車を業務に使用する場合、月20万ウォンの自家運転補助金
② 食事またはその他の飲食物の提供を受けない場合、月10万ウォン以下の食事代
③ 一定要件の学資金
・ 当該勤労者が従事する事業体の業務と関連のある教育や訓練のために受けるものであること
・ 当該勤労者が従事する事業体の規則などによって定められた支払基準に従って受けるものであること
・ 教育や訓練期間が6ヵ月以上である場合は、教育および訓練後、当該の教育期間が超過し、勤務しない場合は、支払われた金額を返納することを条件に受けるものであること
④ 勤労者またはその配偶者の出産あるいは6歳以下の子女の保育と関連して使用者から受け取る給与で、月10万ウォン以内の金額
⑤ 社宅の提供を受けることにより得られる利益(無償で提供を受ける場合に限る。)
(3) 勤労所得控除
勤労所得控除は、勤労所得収入金額(総給与所得)に応じて控除金額が算定されます。
(単位:千ウォン)
2011年12月31日まで発生する所得 | 2012年1月1日以降発生する所得 | ||
総給与所得 | 控除率 | 総給与所得 | 控除率 |
~5,000以下 | 総給与額の80% | ~5,000以下 | 総給与額の80% |
5,000超過
~15,000以下
|
4,000+5,000超過金額の50% | 5,000超過
~15,000以下
|
4,000+5,000超過金額の50% |
15,000超過
~30,000以下
|
9,000+15,000超過金額の15% | 15,000超過
~30,000以下
|
9,000+15,000超過金額の15% |
30,000超過
~45,000以下
|
11,250+30,000超過金額の10% | 30,000超過
~45,000以下
|
11,250+30,000超過金額の10% |
45,000超過~ | 12,750+45,000超過金額の5% | 45,000超過
~80,000以下
|
12,750+45,000超過金額の5% |
80,000超過
~100,000以下
|
14,500+80,000超過金額の3% | ||
100,000超過~ | 15,100+100,000超過金額の1% |
(4) 総合所得控除
総合所得控除には、人的控除(配偶者、扶養家族)、年金保険料控除、特別控除(保険料控除、医療費控除、教育費控除、住宅資金控除、寄付金特別控除の項目別控除又は標準控除100万ウォン)及びクレジットカード等の使用金額に対する所得控除などがあります。
日本に居住している配偶者、扶養家族も所得要件(年間100万ウォン以下)及び年齢要件(60歳以上、又は20歳以下の者)を満たす場合、人的控除を受けることができますが、外国で支払った保険料、医療費、薬剤費、クレジットカード使用金額などは所得控除対象にはなりません。
(5) 総合所得税率
総合所得税率は以下のとおりです。
(単位:千ウォン)
2011年12月31日まで発生する所得 | 2012年1月1日以降発生する所得 | ||
~12,000以下 | 6% | ~12,000以下 | 6% |
12,000超過~46,000以下 | 15% | 12,000超過~46,000以下 | 15% |
46,000超過~88,000以下 | 24% | 46,000超過~88,000以下 | 24% |
88,000超過~ | 35% | 88,000超過~ | 33% |
また、上記の所得税に加え、所得税額の10%に相当する金額が地方所得税として課されます。
(6) 税額控除
税額控除には勤労所得税額控除、外国税額控除、乙勤納税組合税額控除等があります。
① 勤労所得税額控除:勤労所得の算出税額が500千ウォン以下の場合、「算出税額の55%」、500千ウォン超過の場合には、「275千ウォン+500 千ウォンを超過する算出税額の30%」(限度500千ウォン)
② 外国税額控除:控除額は外国納付税額(控除限度額:算出税額×国外源泉所得額/総所得額)
③ 乙勤納税組合税額控除:当該納税組合によって源泉徴収された乙種勤労所得額に対する算出税額の10%に該当する金額
2. 外国人勤労者に対する課税特例
外国人勤労者が国内で勤務することによって支払われる勤労所得に対する所得税は、韓国所得税法上の課税体系の適用を全面的に排除し、当該勤労所得に単純に15%を乗じた金額をその税額として納付する分離課税も申請することができます。
仮に、分離課税を選択する場合は、韓国の所得税法上の非課税、勤労所得控除と人的控除をはじめとする各種所得控除、勤労所得税額控除および乙勤納税組合税額控除などのような税額控除に関する規定は一切適用ないのされで、外国人勤労者に対する勤労所得課税計算が簡単になります。
15%単一税率で分離課税して申告・納付しようとする者は、必ず年末調整または総所得課税標準確定申告時に、勤労所得者所得控除申告書に「外国人勤労者単一税率適用申請書」を添付し、源泉徴収義務者、納税組合、納税地の管轄税務署長へ提出しなければなりません。
なお、この外国人勤労者に対する課税特例は、外国人勤労者が国内で勤務することによって支払われる勤労所得に対して認められるので、乙種勤労所得が発生する場合にも甲種勤労所得と同様に適用できます。