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韓国の移転価格税制(2)

移転価格制度は、多国籍企業が国外特殊関係者との国際取引を通じて課税所得を他国に移転させることを規制する制度です。

 

今回は、グループ内役務提供と関連する移転価格税制及び移転価格と関連する資料提出義務について説明します。

 

1. グループ内役務提供と関連する移転価格税制

 

グループ内役務提供(Intra-Group Service)とは、居住者と国外特殊関係者間で行われる経営管理、金融諮問、支払保証、電算支援及び技術支援等を言います。また、このようなグループ内役務提供対価について、損金算入要件と正常価格算定基準に関する規定をおいています。

 

(1) 損金算入要件

グループ内役務提供対価の損金算入要件は以下の通りです。

 

① 役務提供者が事前に約定を締結し、その約定に基づく役務を実際に提供す ること

② 役務提供を受けた者が、当該役務提供による追加的収益又は費用削減(期待便益)効果を期待できること

③ 当該役務提供対価の算定基準及び請求方法が正常価格原則に適合すること

④ 上記事実を立証する書面を具備・保管していること

 

(2)正常価格算定基準

グループ内役務提供対価の正常価格を算定するにおいて、原価加算法及び取引純利益率法が最も多く利用され、当該方法の適用基準は以下の通りです。

 

① 発生原価には当該役務提供のため、直接又は間接的に要した全ての費用が含まれること

② 役務遂行の一部を外部に依頼した場合は、当該依頼金額に通常の利潤を加算  することができず、自身が直接遂行した活動に対してのみ通常の利潤を加算す   ることができる。

 

(3) グループ内役務提供とみなされない活動

以下に該当する役務はグループ内役務提供とみなされないため、下記活動と関連して国外特殊関係者より請求を受けた費用は損金と認められません。

 

① 株主として活動する役務で、株主総会、株券発行、子会社に対する監査・監督活動及び買収資金調達活動など

② 同様の役務を自身で遂行しているか、又は第三者より提供を受けている役務

③ 直接的便益でない付随的便益と関連する役務

 

 

2. 移転価格と関連する資料提出義務

 

(1) 必須提出資料

国外特殊関係者と国際取引を行う納税者は、法人税申告時に移転価格に関する以下の資料を提出しなければなりません。

 

① 正常価格算出方法申告書

納税者は法人税申告時、正常価格算出方法の中で最も合理的な正常価格算出方法を選択し、選択した方法及び理由を提出しなければなりません。但し、当該事業年度の国際取引金額が以下のいずれか一つに該当する場合を除きます。

– 財貨取引金額の合計額が50億ウォン以下、かつ役務取引金額の合計額が5億ウォン以下の場合

– 国外関連者別の財貨取引金額の合計額が10億ウォン以下、かつ役務取引金額の合計額が1億ウォン以下の場合

② 国外特殊関係者間の国際取引明細書

③ 国外特殊関係者の要約損益計算書

 

(2) 課税当局より提出要請を受けた場合の提出資料

 

課税当局は正常価格による課税調整のために、納税者に国外特殊関連者間の取引価格算定方法に関する以下の資料提出を要請できます。

 

① 資産の譲渡・購入等に関する各種関連契約書

② 製品の価格表

③ 製造原価計算書

④ 特殊関係がある者とない者に区別した品目別取引明細表

⑤ 役務提供やその他の取引の場合には、①ないし④に準じる書類

⑥ 法人の組織図及び職務分掌表

⑦ 国際取引価格の決定資料

⑧ 特殊関係者間での価格決定に関する内部指針

⑨ 当該取引に関連する会計処理基準及び方法

⑩ 当該取引に関連する者の事業活動内容

⑪ 特殊関係者との相互出資状況

⑫ 法人税及び所得税申告時に漏れた書式または項目

⑬ 役務取引に関する当該取引内訳を把握できる資料

⑭ 正常原価負担額等による課税調整に関連する原価負担約定書等の資料

⑮ その他適正価格の算出のために必要な資料

 

(3) 資料提出に関するデメリット

 

納税者が課税当局から上記資料の提出要請を受けた場合は、当該要請を受けた日から60日以内(1回のみ60日を限度として延長可能)に当該資料を提出しなければなりません。正当な事由なく期限内に資料を提出せず、その後不服申立時又は相互合意手続時に資料を提出する場合、当該資料は課税資料として利用することができません。また、正当な事由なく期限内に資料を提出しない、又は虚偽の資料を提出した場合には、1億ウォン以下の過料が賦課されることがあります。

 

(4) 資料提出に関するメリット

 

納税者が法人税申告時に以下の様な正常価格算出方法に関する立証資料を保管・備置き、正常価格算出方法の選択及び適用において合理性があると認められる場合には、移転価格課税が賦課されても、過少申告加算税が賦課されません。

 

① 事業に関する概略的な説明(資産、役務の価格に影響を及ぼす要素に対する分析を含む)

② 事業組織に対する説明資料(移転価格が適用される特殊関係者を含む)

③ 適用された正常価格算出方法が選択された経緯に関する資料

 特定正常価格算出方法の選択根拠となった経済的な分析及び予測資料

 正常価格算出のために使用された比較対象の数値及び評価過程で調整された内訳に対する説明資料

 代替案として適用される可能性のあった正常価格算出方法及び同案が選択されなかった理由

 課税期間の終了後、申告時までに追加された関連資料等

 

ご参考までに、免除される過少申告加算税は以下の通りです。

過少申告加算税 税法によって申告すべきであった課税標準-申告した課税標準 × 税法によって申告すべきであった課税標準に対する算出税額 × 10%
税法によって申告すべきであった課税標準

 


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