- 2014年12月15日
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【韓国の会計・税務レポート】移転価格税制について(2)
韓国の税法では、韓国の事業者が国外の特殊関係者と取引を行う場合、その取引価格に一定の統制を敷くことにより、韓国に帰属されるべき課税所得を国外に移転させることを防止する移転価格税制を設けています。
今回も先月に続いて、韓国の税法で規定している移転価格税制について説明します。
1. 移転価格申告関連の提出書類
(1) 法人税申告時の提出必須書類
国外特殊関係者と国際取引を行った内国法人・居住者、又は外国法人の国内事業場(以下、内国法人等)は、当該事業年度の法人税及び所得税課税標準申告時に下記の書類を提出しなければなりません。
① 正常価格算出方法申告書
: 国外特殊関係者との国際取引に適用した正常価格決定方法の種類及び同方法の適用理由を簡単に記述する書類です。
但し、下記の何れか1つに該当する場合は、提出義務が免除されます。
- 全ての財貨取引金額の合計額が50億ウォン以下で、役務取引金額の合計額が5億ウォン以下の場合
- 国外特殊関係者別の財貨取引金額の合計額が10億ウォン以下で、役務取引金額の合計額が1億ウォン以下の場合
② 国際取引明細書
③ 国外特殊関係者の要約損益計算書
但し、下記の何れかに該当する場合は、提出義務が免除されます。
- 国外特殊関係者との財貨取引金額の合計が10億ウォン以下で、役務取引金額の合計が1億ウォン以下の場合
- 海外現地法人明細書及び海外現地法人の財務状況表を提出する場合
(2) 課税当局が要求できる資料
課税当局は、国外特殊関係者と国際取引を行った内国法人等に、法人税及び所得税課税標準申告時に提出しなければならない(1)の資料以外にも、正常価格算定方法等の関連資料の提出を要求することができます。課税当局が内国法人等に要求できる資料の範囲は下記の通りです。
- 資産の譲渡・買入等に関する各種関連契約書
- 製品の価格表
- 製造原価計算書
- 特殊関係にある者と特殊関係にない者とを区別した品目別取引明細表
- 役務の提供やその他の取引の場合は、上記に準ずる書類
- 法人の組織図及び事務分掌表
- 国際取引価格決定資料
- 当該取引と関連した会計処理基準及び方法
- 特殊関係にある者との相互出資状況
- その他適正価格算出のため必要な資料
(3) 書類未提出時の不利益
正常価格算出方法申告書、国際取引明細書、国外特殊関係者の要約損益計算書等、移転価格関連申告添付書類を所得税法、又は法人税法規定による課税標準確定申告期限内の提出を行わない場合、内国法人等は課税当局より未提出資料の提出を要求されます。内国法人等がやむを得ない事由(災害、事業上危機等)により申告期限内に提出できない場合は、管轄税務署長に提出期限の延長を申請することができ、申請を受けた納税地管轄税務署長は1年の範囲内でその提出期限の延長を承認することができます。
また、課税当局は所得税法、又は法人税法課税標準申告期限以外でもいつでも資料提出を要求することができ、課税当局が提出を要求した申告添付書類を60日(余儀ない事由がある場合は60日延長可能)以内に提出できない場合、最高1億ウォン以下の過料が賦課される可能性があります。また、資料提出の要求を受けた者が正当な事由なく資料を期限内に提出せず、不服申請、又は相互合意手続き時に資料を提出する場合、課税当局及び関連機関は当該資料を課税資料として利用しないことがあります。
2. 正常価格算出方法事前承認制度
(1) 意義
正常価格算出方法事前承認制度(Advance Pricing Arrangement、APA)とは、納税義務者が今後国外特殊関係者との取引への適用を希望する正常価格算出方法について課税官庁の事前承認を得る制度です。上述した所得税及び法人税申告時、又は課税官庁の要求により移転価格関連書類を提出することは、課税官庁の事後承認を得る方法で、APAとは異なります。
課税官庁よりAPAを得た内国法人等は、対象期間中に国外特殊関係者との取引で承認された正常価格算出方法のみを適用しなければなりません。また、国外特殊関係者と行った取引がAPA申請時に提出した前提条件及び仮定を満たす限り、課税官庁が承認した方法を最適の方法として認められます。
(2) APAの手続き
① 事前承認申請書の提出
APAを得ようとする内国法人等は、対象期間・対象国際取引・取引当事者及び正常価格算出方法等を記載した正常価格算出方法の事前承認申請書及び国際租税調整に関する法律施行例で規定している書類を、正常価格算出方法申請対象期間の最初の課税年度終了日まで課税官庁に提出します。
この際、内国法人等は適用を希望する正常価格算出方法について、国外特殊関係者を管轄する国家の課税官庁との相互合意を共に申請することもできます。両国課税官庁間の相互合意が行われた場合は、韓国のみでなく相手国でも方法の最適性を認められるようになります。
② 事前承認申請の審査
課税官庁は申請された正常価格算出方法の適正性を審査します。この過程で、課税官庁は追加資料の提出及び提出された資料の釈明、正常価格算出方法の修正、比較対象企業、又は取引の交換を要求することができます。
③ 事前承認手続きの進行
申請人が相互合意による事前承認を申請した場合、課税官庁は相手国の課税当局と相互合意手続きを進行することになります。
④ 事前承認
課税官庁は相手国の課税当局との相互合意手続きを通じて正常価格算出方法に関する合意が行われた場合、これに基づいて事前承認をします。
一方的な事前承認の場合は、申請日より2年以内に事前承認をします。
⑤ 年例報告書の提出
課税官庁より事前承認を得た納税義務者は、対象事業年度の課税標準申告期限の翌月から6ヶ月以内に年例報告書を作成して課税官庁に提出しなければなりません。
⑥ 事前承認の取消等
課税官庁は事前承認を得た内国法人等より年例報告書の提出を受けていない場合や、事前承認申請時の提出書類等に重要な虚偽事項を発見した場合、事前承認を取り消すことができます。