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【韓国会計】役に立つ勤労所得税について(2):韓国に赴任する駐在員のために

仕事で日本(東京)に出張に行くと地理上は日本と韓国は本当に近い国であると思います。業務日程が短ければ1日でも十分で、ソウルから釜山や光州へ出張に行くのと比べても余り差がありません。日本の大衆交通手段にも慣れると羽田空港から東京都心部までの移動も無理なくでき、これが本当に海外出張であると言えるものかという気にもなります。

 

しかし、出張ではなく転勤などで長時間日本に留まることになれば話は変わるでしょう。まず、地理的に近いだけで住居から文化、生活環境や社会制度など、多くの部分が異なるため一から真摯に準備しないといけないでしょう。日本から韓国に赴任する駐在員も出張なら気軽にこなせることでも、長期間の駐在で派遣されると韓国に対する様々な知識習得が必要であると思います。

 

前回はこれと関連し、韓国の税法で駐在員が知っておくと役に立つ勤労所得税について簡単に探ってみました。前回の主題以外にも筆者が日本人駐在員に関する税務問題をサポートしながら頻繁に接する事例があるので今回紹介したいと思います。税務的には前回の記事よりもっと基本的なもので、より重要なものではないかと思います。

 

駐在員は韓国の現地法人又は支店の管理や支援の目的で派遣される場合がほとんどです。もちろん、韓国に工場や設備施設がある場合は技術目的の駐在員が派遣される場合もありますが、大きな枠では同一の目的で韓国に赴任します。だからこそ実質的な勤労は韓国で実施しても、本社又は親会社に所属し、派遣、命令などの形で勤務します。そのため、本社所属であっても税法上では実質的な勤労の提供場所が韓国であり、一部例外的な状況を除いて勤労に対する代価は韓国で課税されます。

 

韓国税法で勤労所得を支払う者(会社)に源泉徴収義務を課しているため、日本と同様に会社は給与を支払う際に勤労所得総額から一部を所得税として源泉徴収します。従って、仮に韓国現地法人や支店が駐在員の勤労所得を直接支払う場合は、必ず一部を税金として源泉徴収した後に駐在員の口座に入金しなければなりません。しかし、本来の所属が日本の本社又は親会社であるため、駐在員によっては本社から直接支払われる場合もあります。この場合は日本本社は韓国の現地法人又は支店とは異なって韓国税法による源泉徴収義務者ではないため、勤労所得税を源泉徴収する必要がありません。では、この駐在員は源泉徴収の必要がなく、韓国で勤労所得税を納付しなくても良いのでしょうか。

 

結論は勿論そうではありません。日本の親会社又は本社から支払いを受ける所得は源泉徴収義務が免除されるのは正しいですが、韓国で勤労を提供した代価として受ける所得であるため韓国で勤労所得税を納付する義務があります。所得が韓国の現地法人や支店を通して支払われず、支払時点ごとに源泉徴収が行われなかったため、駐在員本人が毎年5月に過去1年間の所得を直接申告及び納付しなければなりません。仮に、一部の給与は韓国の拠点を通して受け、残りは日本から支払を受けた場合であれば、前者は源泉徴収され毎年2月の年末調整で納税義務が完了しますが、後者は年度中に別途に納付されなかったため、前者後者を全部合わせて5月に最終的に申告しなければなりません。

 

韓国税法では従来は上記の様に源泉徴収義務があるかどうかにより勤労所得を「甲種勤労所得」と「乙種勤労所得」とで区分していました。しかし、源泉徴収義務のない乙種勤労所得は源泉徴収義務のみが免除された所得であるにもかかわらず、税金を納付する必要のない所得であるという誤解が多く発生していたため、現在は甲種、乙種という用語を削除して全てを勤労所得と呼んでいます。

 

但し、日本から直接受ける勤労所得も韓国の拠点を通して受ける所得と同様に源泉徴収できる制度があることはご参考ください。これは「納税組合」という制度で、外国から直接支払いを受ける給与のある駐在員が納税組合に加入すると韓国から受けるのと同様に、外国から給与を受ける際に一部を勤労所得税として源泉徴収することができます。韓国の課税官庁は納税組合に加入する駐在員に対し納税協力に対する恩恵として納付税額の10%の税額を控除していますので、この制度を利用することも節税に良い方法ではないかと思います。

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