- 2014年7月17日
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【韓国の会計・税務レポート】棚卸資産及び有価証券の評価
棚卸資産及び有価証券の評価は、会社の損益計算に重大な影響を及ぼす事項です。これを勘案して、韓国の法人税法では棚卸資産及び有価証券の評価方法を具体的に明示することで、会社がこれに対し恣意的に評価することを防止しています。従って、会社は課税所得を計算する際、必ず法人税法に基づいて棚卸資産及び有価証券を評価すべきであり、企業会計基準や慣行を適用することは認められません。
今回は、法人税法で規定している棚卸資産及び有価証券の評価方法を確認し、法人税法上の評価方法の申告及び変更手続きについて説明します。
1. 法人税法上の評価方法
(1) 棚卸資産の評価方法
法人税法では棚卸資産を評価する方法として原価法と低価法を認定しており、棚卸資産の評価は、このうち法人が納税地管轄税務署長に申告した方法に従います。法人が棚卸資産の評価方法のうち、低価法を申告する場合は、時価と比較される原価法を同時に申告しなければなりません。
区分 |
方法の定義 |
原価法 |
個別法・先入先出法・後入先出法・総平均法・移動平均法及び売上価格還元法のうち、1つの方法により算出した取得価額をその資産の評価額にする方法 |
低価法 |
原価法で評価した価額と企業会計基準により時価で評価した価額(純実現 可能価額*1、現行立替原価*2)のうち、低い価額を評価額にする方法 |
*1 正常的な営業活動過程のうち、資産の販売、又は処分により流入されると期待される金額
*2 法人が保有している資産と同等、又は同等の資産を取得するのに必要とされる金額
法人が棚卸資産の評価方法として原価法のみを申告し、低価法は申告しない場合、会計上計上した棚卸資産評価損は、法人税法では全額否認されます。
法人は、棚卸資産を①製品及び商品、②半製品及び仕掛品、③原材料及び④貯蔵品とで区分し、種類別・営業上別にそれぞれ異なる方法により評価することができますが、この場合、収益及び費用を営業の種目別、又は営業上別にそれぞれ区分して記帳しなければなりません。
(2) 有価証券の評価方法
法人税法で規定している有価証券の範囲は、株式・出資持分及び債権を言い、これには短期売買証券、満期保有証券、売渡可能証券及び持分法適用投資株式が全て含まれます。
法人税法では、有価証券の評価方法として原価法のうち個別法(債権の場合にのみ該当)・総平均法・移動平均法を認定しており、有価証券の評価は、このうちで法人が納税地管轄税務署長に申告した方法によります。
有価証券に対し法人税法で認定する評価方法は全て有価証券評価利益及び評価損失を認定しない方法であるため、法人が会計上計上した有価証券評価利益及び評価損失は法人税法では全て否認されます。
(3) 要約
区分 |
法人税法上処理原則 |
棚卸資産 |
以下の方法のうち、何れかを選択して申告 ① 原価法 à 棚卸資産評価損失否認 ② 低価法 à 棚卸資産評価損失認定 |
有価証券 |
以下の方法のうち、何れかを選択して申告 ① 個別法 à 有価証券評価利益・損失否認 ② 総平均法 à 有価証券評価利益・損失否認 ③ 移動平均法 à 有価証券評価利益・損失否認 |
2. 評価方法の申告及び変更
(1) 評価方法の申告期限
棚卸資産、又は有価証券の評価方法を申告(または変更申告)する場合は、以下の期限内に棚卸資産などの評価方法申告(変更申告)書を納税地管轄税務署長に提出しなければなりません。
区分 |
申告期限(変更申告期限) |
新設法人と新しく収益事業を開始した非営利法人の場合 |
当該法人の設立日(又は収益事業開始日)が属する事業年度の法人税課税標準の申告期限 |
評価方法を申告した法人で、その評価方法を変更する法人 |
変更する評価方法を適用する事業年度終了日以前3カ月となる日 |
(2) 無申告・任意変更時の評価方法
法人が申告期限内に評価方法を申告しない場合(以下、「無申告」という。)、又は申告した評価方法以外の方法で評価、又は申告期限内に評価方法変更申告をせずその方法を変更した場合(以下、「任意変更」という。)は、納税地管轄税務署長が以下の方法により棚卸資産及び有価証券を評価します。
区分 |
無申告時の評価方法 |
任意変更時の評価方法 |
棚卸資産 |
先入先出法 |
Max(①、②) ① 無申告時の評価方法により価額、 ② 当初申告方法による価額 |
有価証券 |
総平均法 |