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【韓国の会計・税務レポート】韓国での国家間二重課税問題の調整方法に対する改正の必要性

今回は、国家間二重課税問題を調整するための韓国の制度を紹介し、同制度に関連して納税者と課税当局間で争点となった最近の事例を調べてみます。

また、現行の二重課税問題の調整方法に対する改正の必要性も考えてみましょう。

 

 

1.国家間二重課税問題の調整方法

 

韓国法人が直接投資をして外国に子会社を設立した場合に、その子会社が進出国で獲得する所得に対しては、その外国の税法によりその国で法人税を納付し、その所得が韓国法人に配当の方式で送金される場合は、韓国の税法により法人税を追加で納付しなければなりません。

このような国家間の二重課税問題を調整するため、韓国の法人税法第57条では、外国納付税額を法人税から控除する制度及び損金に算入する制度を規定し、納税者が選択して適用を受けることができるようにしています。

 

即ち、居住地国の課税原則により、法人の全世界での所得に関る課税権の行使は法人の所在国である韓国で行うものの、国家間の二重課税問題を調整するため外国納付税額を法人税の決定税額から控除するか(税額控除方式)、法人税の課税標準を計算する際に損金に算入(損金算入方式)できるように規定しています。

 

なお、2014年1月1日以前までは、地方所得税を法人税の決定税額の10%を課税する方式(付加税課税方式)で地方所得税が徴収されましたが、2014年1月1日からは、地方所得税が独立税課税方式に転換されました。法人税法により算定される法人税の課税標準に、地方所得税率(10%)を掛ける方式に改正されたことになります。

従って、納税者が二重課税問題を調整するために税額控除方式を選択する場合、従前は外国納付税額が法人税の決定税額を算出する際に減算され、地方所得税からも外国納付税額控除額の10%に該当する税額控除の適用を受けましたが、同改正により、2014年1月1日からは地方所得税から外国納付税額の控除を受けることができなくなりました。

 

 

2.監査院の審査決定

 

このような法人税法と地方税法の外国納付税額に対する取扱方式の差異により、課税当局と納税者間で争点となった事例(監審2016-835、2018.05.24.外6件)がありました。

 

外国納付税額に対する地方所得税の還付請求を課税当局が拒否し、納税者はこれを不服として監査院(日本の会計監査院に該当)に審査請求を提起しました。納税者は幾つかの理由を挙げ、課税当局の処分が不当であると主張しましたが、その主張の一部は、法人税から外国納付税額を税額控除方式にして調整したとしても、地方所得税の課税標準を計算する時は損金算入方式に変更した方が妥当であり、外国納付税額を調整する方式として、税額控除方式と損金算入方式のうち、どの方式を選択するかによって地方所得税額に差異が発生することは、不当であるとのことでした。

 

これに対し監査院は、地方税法では法人税の課税標準がそのまま地方所得税の課税標準になるため、納税者が法人税では税額控除方式を適用した後、地方所得税では損金算入方式に変更して地方所得税の課税標準を再算定することは許容することができず、納税者が法人税法と地方税法で許容されている範囲内で、法人税のみでなく地方所得税まで含めた総負担税額が最少になる方法を自由に選択できるため、課税当局の処分が妥当であると決定しました。

 

 

3.現行制度の改正の必要性

 

アメリカのトランプ大統領は、2018年より改正される税法改正案(Tax Cuts and Jobs Act)を2017年12月22日に承認しました。同改正案には、海外所得に対する課税原則を居住地国課税原則から源泉地国課税原則に転換しました。アメリカ企業が海外子会社から支給を受けた配当所得は非課税とし、海外法人から受取る配当所得を非課税とすることにより、改正前に課税されていない海外所得を1回に限って課税するとの改正が含まれています。アメリカでは、過去に類似した制度を導入したことがありますが、2004年雇用創出促進法(The American Jobs Creation Act)を実施し、2004年及び2005年に一時的に海外子会社から受取る配当金に対する税率を35%から5.25%に下げました。同制度の実施により、海外子会社からの配当金が急増したことに現れています。

 

日本の場合も、2009年から外国子会社の配当所得を非課税することと改正しており、以降外国子会社からの配当金が増加したと知られています。

 

韓国の法人税率は、課税標準2億ウォンまでは10%、2~200億ウォンに対しては20%、200~3,000億ウォンに対しては22%、3,000億ウォン超過分に対しては25%で、日本財務省のホームページに載っている『法人実効税率の国際比較』にある主要国の法人税率と比べてみますと低い水準にあります。韓国は、アメリカや日本のように法人税率の高い国ではないため、海外の子会社に利益を移転しようとする誘因も低く、二重課税問題が発生する可能性も高くないと言えます。

海外で獲得した利益を積極的に韓国に持ってきて、韓国内での投資や雇用創出の財源として活用できるようにする環境を作る必要があります。そのような環境整備の一つとして、源泉地国課税原則である国外所得免除制度の導入を考慮する必要があります。更に、上述した通り、アメリカが源泉地国課税原則に転換することによって、OECD会員国で居住地国課税原則を固守している国は韓国とメキシコ程度しかいないため、源泉地国課税原則への改正が必要ではないかと考えられます。

 

 

- 以上 -

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