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【韓国の会計・税務レポート】国外事業者が提供する電気通信利用役務に対する付加価値税の課税

現在、OECDとEUを中心に、デジタル経済に適した新しい恒久的施設(Permanent Establishment)の概念導入等多国籍IT企業(グーグル、アップル、フェースブック等)の租税回避に対応するための法人税(いわゆる、「グーグル税」)について論議されています。

 

韓国が締結している各国との租税条約及び韓国の法人税法によると、外国法人の国内源泉事業所得に対して法人税を課税するためには、国内に恒久的施設を有していなければなりません。ITサービス業の場合、サーバーが国内に所在しなければ法人税を課税することができないため、現在は、電子的役務を供給する多国籍IT企業に対しては付加価値税のみ課税されている状況です。

 

今回は、消費地国の課税原則により、2015年7月1日から施行されている国外事業者の電子的役務の供給に対する付加価値税(Value Added Tax、以下「VAT」と言う)の課税制度についてご紹介します。[1]

 

 

1.電子的役務を供給する国外事業者に対する特例

 

韓国の付加価値税法第53条の2によると、外国法人、又は非居住者が韓国内に電子的役務を供給した場合は、韓国内で役務を供給したこととみなして10%の税率でVATが課税されます。但し、その役務の供給を受ける者が事業者の場合は、VATが課税されず、一般消費者向けの役務提供に対してのみ適用されます。[2]

 

ここで、電子的役務とは、移動通信端末装置、又はコンピューター等にダウンロードして利用したり、リアルタイムで利用できるもので、以下の何れかに当たるものを言います。

 

①    ゲーム・音声・動画ファイル、電子文書、又はソフトウェアのような著作物等で、光、又は電子的方式で処理して、符号・文字・音声・音響及び映像等の形態で制作、又は加工されたもの

②    ①の電子的役務を改善させたもの

③    広告を掲載するサービス

④    クラウド・コンピューティング・サービス

⑤    財貨、又は役務の仲介

 

なお、国外開発者が、以下の何れかに該当する第三者(非居住者、又は外国法人を含む)を通じて国内に電子的役務を供給する場合は、その第三者が当該電子的役務を国内で供給したものとみなされます。即ち、国外開発者がオープンマーケットや仲介人等を通じて国内に電子的役務を供給した場合は、そのオープンマーケットや仲介人等がVATを申告・納付しなければなりません。

 

①    情報通信網等を利用して電子的役務の取引ができるよう、オープンマーケットやそれと類似したものを運営し、関連サービスを提供する者

②    電子的役務の取引で仲介等を行う者で、購買者から取引代金を受取って販売者に支払う者

 

 

区分

VATの申告・納付義務者

(1)   国外開発者が直接供給する場合

非居住者、又は外国法人

(2)   国外オープンマーケット、
又は仲介人等を通じて供給する場合

国外オープンマーケット、又は仲介人等

(3)   国内オープンマーケット、
又は仲介人等を通じて供給する場合

国内オープンマーケット、又は仲介人等

 

以下では、国外事業者がVATの課税対象になる電子的役務を供給する場合のVATの申告・納付関連の手続き等をご説明します。

 

2.簡便[3]事業者登録の申請

 

国外事業者がVATを申告・納付するためには、まずは、事業開始日[4]より20日以内に国税情報通信網に接続して申請しなければなりません。簡便事業者登録申請時に記載する事項は以下の通りです。

 

①    事業者及び代表者の氏名、電話番号、住所、電子メールアドレス及びウェブサイトアドレス等の連絡先

②    登録国、住所及び登録番号等、役務を提供する事業場が所在する国外事業者登録関連情報

③    提供する電子的役務の種類、国内に電子的役務を供給する事業開始日

④    納税管理人がいる場合、納税管理人の氏名、住民登録番号又は事業者登録番号、住所、電話番号

⑤    付加価値税還付金を受けるために金融会社等に口座を開設した場合は、その口座番号

 

 

3. VATの申告・納付

 

韓国でのVATの申告・納付は四半期ごとに行われます。四半期の終了日の翌月(1,4,7,10月)の25日までに国税情報通信網に接続してVATを申告し、国税庁長が定めるところにより、外国為替銀行の口座に納入する方式でVATを納付しなければなりません。

 

 

4.その他

 

(1) 納税地の指定

 

簡便事業者登録を行った事業者の納税地は、事業者の申告・納付の効率及び便宜を考慮し、国税庁長が納税地を指定します。

 

(2) 税金計算書発行義務の免除

 

韓国では、付加価値の計算方式として、日本とは異なるTax Invoice(税金計算書)方式を採用しています。従って、財貨や役務の供給者は、供給を受ける者に付加価値税法で規定している税金計算書を発行しなければなりません。しかし、簡便事業者登録を行った事業者が国内に供給する電子的役務に対しては、このような税金計算書の発行義務が免除されます。

 

- 以上 -

 


1  日本でも、2015年4月に電子書籍・音楽・広告の配信等インターネット等で行われる役務の提供(電気通信利用役務の提供)に関連する消費税法が改正され、2015年10月1日から国外事業者が日本に向けて行った電気通信利用役務に対し、消費税が課税されました。

2  日本の場合、事業者向けの電気通信利用役務の提供に対しては、国外事業者から当該役務の提供を受けた国内事業者が消費税の申告・納付を行う、いわゆるリバースチャージ方式が導入されていましたが、韓国では導入されていませんでした。

3  一般的な事業者登録の手続きよりは簡便に行われるため、‘簡便’と言う用語が使用されています。

4  事業開始日は、以下のうち、早い日を言います。

①   購買者が供給者から電子的役務の提供を受けた時

②   購買者が電子的役務を受けるため、代金決済を完了した時

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