- 2020年4月17日
- > 会計・税務
【韓国の会計・税務レポート】低付加価値役務取引に対する簡素化された正常価格算出方法の導入
多国籍企業グループ内での役務取引(Intra Group Service)に対する簡素化された正常価格算出方法[1]が、去る2月11日に国際租税調整に関する法律[2](以下、「国租法」と言う)施行令第6条の2第2項と第3項に導入され、2020年1月1日以降開始する事業年度から適用されることになりました。同規定の導入は、多国籍企業グループ内での低付加価値役務取引に関連する原価に5%を加算して代価を授受する慣行に対し、法的根拠が備えられたということで、意義があるものと考えられます。
なお、日本でも2018年2月16日に「移転価格事務運営要領」が改正され、企業グループ内での役務取引に対する例外的な取扱(簡易な算定方法)が追加されました。今回の新設規定は、BEPSプロジェクト Action 8-10の最終報告書を反映したOECDガイドラインによるものであるため、適用除外を除き、日本の規定と差異はないといっても差し支えありません。
下記では、国租法上の一般的な役務取引に対する正常価格算出方法を案内後、新設された多国籍企業グループ内で行われる低付加価値役務取引に対する簡素化された正常価格算出方法を紹介します。
Ⅰ.一般的な役務取引に対する正常価格算出方法
居住者と国外特殊関係者間の役務取引(経営管理、金融諮問、支払保証、電算支援及び技術支援等)の価格が、以下の要件を全て充足する場合は、その取引価格を正常価格とみなします。
① 役務の提供者が事前に約定を締結し、その約定により役務を実際に提供すること
② 役務の提供を受けたものが、提供を受けた役務により収益が発生するか、或いは費用が節減されることを期待できること
③ 提供を受けた役務の代価が正常価格算出方法(比較可能第三者価格法、再販売価格法、原価加算法、利益分割法、取引純利益率法、その他合理的な方法)により算定されること
④ 上記①~③の事実を証明する文書を保管、備えておくこと
今までは、低付加価値役務取引とそうでない役務取引を区分せず、低付加価値役務取引に対する正常価格も上記の要件により算定していました。従って、多国籍企業の納税協力費用や課税当局の税務行政に対する負担も、低付加価値役務取引に対する規定を導入している国に比べて大きくならざるを得ませんでした。このような問題を解決し、主要国で既に導入している低付加価値役務に対する取扱と一致させるための制度の導入が求められてきました。
Ⅱ.低付加価値役務取引に対する正常価格算出方法
1.低付加価値役務取引の要件
以下の要件を全て充足する居住者と国外特殊関係者間の役務取引を言います。
(1) 会計・監査・法律諮問・人事管理等支援的性格の役務で、グループの核心事業活動と直接的な関係がないこと
(2) 役務の内容が以下に該当していないこと
1) 研究開発
2) 天然資源の探査・採取及び加工
3) 原材料購入、製造、販売、マーケティング及び広報
4) 金融、保険及び再保険
(3) 役務の提供過程で、独特で価値のある無形資産を使用したり、創出していないこと
(4) 役務の提供過程で役務の提供者が重要なリスクを負担したり、管理・コントロールしていないこと
(5) 特殊関係のない第三者と当該役務と類似した内容の役務取引が行われていないこと
2.正常価格:原価に5%を加算した金額
3.適用除外
当該事業年度に低付加価値役務取引の金額が、売上高の5%と、営業費用(販売費及び一般管理費)の15%のうち、少ない方の金額を超過する場合は適用されません。従って、適用除外に該当する場合は、上記Ⅰ.の一般的な役務取引に対する正常価格算出方法が適用されます。
- 以上 -