- 2021年10月16日
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【韓国の会計・税務レポート】税務調査対象者の選定基準及び税務調査の周期、税務調査期間
国税庁が10月8日に国会に提出した国政監査資料によりますと、
2020年国税庁の税務調査件数及び賦課税額はそれぞれ3,984件及び3兆5,337億ウォンで、
税務調査件数と賦課税額の両方ともに2016年以降最も少ない結果となりました。
国税庁は、新型コロナウィルスの影響を受けて困っている企業のために
税務調査を減らしたためであると説明しました。
税務調査件数と賦課税額を年度別にみてみますと、税務調査件数は2016年5,445件、2017年5,147件、
2018年4,795件、2019年4,602件から2020年3,984件に減り、賦課税額も2016年5兆3,837億ウォン、
2017年4兆5,047億ウォン、2018年4兆5,566億ウォン、2019年4兆4,590億ウォンから
2020年には3兆5,337億ウォン台に減っています。
今回は税務調査と関連する納税者の主な関心事項であると考えられる
税務調査対象者の選定基準及び税務調査の周期、税務調査期間について
国税基本法及び調査事務処理規定[1]に基づいて紹介します。
1.税務調査対象者の選定基準及び税務調査の周期
国税基本法第81条の6第3項及び調査事務処理規定第8条第1項では、
以下に該当すると優先的に税務調査対象者に選定されます。
① 納税者が税法で定める申告、税金計算書等の作成・交付・提出、
支払明細書の作成・提出等の納税協力義務を履行しなかった場合
② 無資料取引、偽装・架空取引等取引の内容が事実と異なる疑いがある場合
③ 納税者に対する具体的な脱税の情報提供があった場合
④ 申告内容に脱税や誤謬の疑いを認める明白な資料がある場合
⑤ 納税者が税務公務員に職務と関連して金品提供を行い、金品提供を斡旋した場合
しかし、ほとんどの納税者は以下に該当し、申告内容の正確性検証のため税務調査を
受けることになります(国税基本法第81条の6第2項、調査事務処理規定第8条第1項)。
① 国税庁長が納税者の申告内容について、課税資料、税務情報及び外部監査意見、
外部監査実施内容等会計誠実度資料等を考慮して定期的に誠実度を分析した結果、
不誠実の疑いがあると認められる場合
② 直近4課税期間(又は4事業年度)以上同一税目の税務調査を受けていない納税者で、
申告内容の適正性可否を検証する必要がある場合
③ 無作為抽出方法により標本調査対象と選定された場合
クライアントからは税務調査の周期に関する質問が多く、その中でも、
5年に一度は必ず税務調査を受けなければならないか、という質問をよくお受けします。
調査事務処理規定及び国税基本法では、4年を長期未調査法人の算定基準として規定していますが、
韓国に進出している日系会社の大部分は、4年以上相当な期間税務調査を受けていなかったために
長期未調査法人に選定され、税務調査を受けていると知られています。
2.税務調査期間
税務調査と関連する納税者の関心事項としては、税務調査の周期とともに税務調査期間が挙げられます。
税務調査を受けたとしても、短期間であって欲しいと考えるのが全納税者の共通の希望事項です。
税務調査期間を法律等で明確に規定することで納税者の不安を解消することはできますが、
税務調査期間を一律に規定することは困難であるものと思われます。
国税基本法第81条の8第2項及び調査事務処理規定第15条では、
税務調査に必要な最小限の期間を調査期間と定めなければならないと規定しているのみです。
即ち、税務調査期間を定めるにあたり、調査対象の税目、業種及び規模、
調査の難易度等を勘案して調査に必要な最小限の期間で定めなければならないと規定しています。
但し、中小規模納税者に対してだけは調査期間を明確に提示していますが、
年間売上高が100億ウォン未満の法人の場合は、調査期間は20日以内と規定されています。
中小規模納税者の範囲に該当しない場合、果たしてどの程度の税務調査期間になるのでしょうか。
いわゆる大規模納税者に対しては地方国税庁で税務調査を管轄
(中小規模納税者に対する税務調査は通常税務署が実施)することを考慮しますと、短くて1ヶ月、
長くて3ヶ月程度の調査期間になるものと考えられます。
筆者は、年間売上高が300億ウォンを超える日系投資企業に対する税務調査の場合、
地方国税庁が管轄し、1ヶ月から2ヶ月程度の税務調査が行われたケースを多く経験しました。
[1] 税務調査の透明性と信頼性を高めるために2006年3月に公開されたもので、その内容は、調査期間·調査範囲·調査方法など税務調査の際に遵守する事項、納税者権益保護手続·調査権乱用時の責任·調査協力義務、調査対象者選定原則と概括的な選定基準及び手続き·方法などです。 非公開内容は、税務調査対象者の選定に関する誠実度評価基準などの細部基準と方法、細部の調査期間と方法、税務調査の報告および承認体系、租税犯則調査審議委員会の構成および審議手続などです。 公開されている内容は、税務調査の一般的な事項であり、公開されても税務調査に支障をきたす可能性はほとんどないといえます。