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グローバルミニマム課税の導入

1.定義

グローバルミニマム(最低税率)課税で使われる主要用語は、以下の通りです。

  1. 多国籍企業グループ:複数の国に企業、又は固定事業場を有するグループ
  2. 構成企業:多国籍企業グループに属する企業(法人、組合及び信託等)
  3. 最終親会社:他企業の支配持分を最終的に所有する企業
  4. 所有持分:企業の利益、資本金及び準備金に対する権利を伴う出資持分

 

2.適用対象及び納税義務者

グローバルミニマム課税の適用対象は、直近4事業年度のうち、2事業年度以上の連結売上高が、

7億5千万ユーロ以上の多国籍企業グループの構成企業になります。

政府機関、国際機関、非営利機構、年金ファンド、最終親会社である投資ファンド

及び不動産投資機構等は、構成企業から除外されます。

国内の構成企業は、所得算入規則及び所得算入補完規則に基づく追加税額を、

法人税として納付することになります。

 

上記の売上高基準は、既に導入されている国別報告書の提出基準と同一です。

全世界で約1,500社の多国籍企業が該当すると推定されます。

 

3.追加税額の賦課方式

海外子会社が低率課税される場合、すなわち、源泉地国で納付する税金の実効税率が

15%未満の場合、その差額に対し、

親会社が追加税額を親会社の所在国に納付する「所得算入規則」を適用する。

所得算入規則が適用されない場合(最終親会社が低率課税される場合、

又は親会社の所在地国が所得算入規則を導入していない場合)は、

所得が発生した国、すなわち、子会社の所在地国の源泉地国で追加課税を通して、

実効税率が15%になるようにする「所得算入補完規則」で構成されています。

 

4.追加税額の計算

所得算入規則、及び所得算入補完規則を適用するために追加税額を計算する時は、

国別に帰属される最低税率適用対象利益のうち、人件費、及び有形固定資産の純帳簿価額の

5%に該当する部分を除いた超過利益に対してのみ、追加税額を賦課します。

グローバルミニマム課税が企業の全ての利益に対し適用されるのではなく、

多国籍企業の租税回避の重要な手段となっている知的財産権による所得や、

金融所得等移動性の大きい所得に対し適用するものです。

 

5.示唆点

2022年税法改正案では、グローバルミニマム課税の導入だけでなく、

海外子会社からの配当金に対する課税方式を、外国納付税額控除方式から

国外所得免税方式に転換する規定の導入も提示しています

「海外子会社からの配当金二重課税調整の合理化」(2022年9月22日付掲載)参照) 。

 

新設される2つの規定では、グローバルミニマム課税の

適用対象企業ではない企業の国外所得は免税されます。

しかし、グローバルミニマム課税の適用対象企業の国外所得に対しては、15%の税率が適用されます。

従って、グローバルミニマム課税は、国外所得免税制度の長所を縮小させることと予想されます。

 

なお、ほとんどの国ではグローバルミニマム課税を導入していませんが、

韓国のみが導入することで、多国籍企業の流入に否定的な影響を及ぼしかねません。

グローバルミニマム課税の導入には、他国と歩調を合わせることが非常に重要であると考えられます。

このような側面で、グローバルミニマム課税の施行時期を、2024年と提示したことは妥当です。

しかし、具体的な施行時期は、他国の導入状況を確認しながら柔軟に対応する必要があります。

また、企業に与える負担を最小化させるため、

制度施行以前に下位規定である施行令及び施行規則等に対する整備も要求されます。

 

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