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財務諸表を読もう:損益計算書

ある会社の近況が知りたい時、次のように聞きます。「その会社、うまくいってる?最近お金は稼げているのかな?」

情報の洪水の中で生きている今、もしあなたがこのような質問を受けたら、まずその会社についてどのような情報を探しますか。もちろん良い情報源はいろいろありますが、おそらくほとんどの人が、まずインターネットを通して会社の売上高や純利益などの情報を確認するでしょう。経済新聞やニュースなどの各種経済関連媒体を見ても、会社の最近の動向や成果などを扱う記事は、基本的に当期と前期の売上高や営業利益、または当期純利益などの資料を分析して、会社が市場でどのように営業を行っているか、成長しているかを示す内容となっています。

では、売上高や各種収益、費用などは、どのような財務諸表で確認できるのでしょう。前回解説した財務状態計算書が、ある時点の企業の財務状態を表すストックの財務諸表であるとしたら、包括損益計算書は一定期間の会社の成果を収益と費用等の項目を通して表すフローの財務諸表です。包括損益計算書は、旧企業会計基準の損益計算書と大きな枠内では同一の性格の財務諸表となります。今回は、旧企業会計基準との比較を通して包括損益計算書について探ってみます。

包括損益計算書はその名からも分かるよう、旧企業会計基準の損益計算書とは異なり、一定期間中に発生した「全て」の収益および費用が含まれます。従って、包括損益計算書には当期純損益だけでなく、その他包括損益も表示される点が旧企業会計基準との最も大きな違いです。その他包括損益とは、会社の損益ではあるが実現されていない項目を指し、旧企業会計基準では当期純損益に反映されず、財務諸表上の純資産として認識される項目でした。例えば、会社が保有している有形固定資産を再評価することによって発生する再評価差額がその代表的な例であると言えます。もう少し分かりやすく例えてみると、株式投資をしているサラリーマンの収益であるとも考えられるでしょう。毎月通帳に振込まれる月給が実現された利益であるならば、投資をして保有中の株式の価値上昇分は、その他包括損益のような未実現利益になるわけです。

また、国際会計基準では損益計算書上の費用項目について、性格別または機能別分類方法のうち1つの方法を選択できるようになりました。性格別分類とは、当期損益に含まれた費用をその性格別のみで分類し、機能別には再分類しない方法です。すなわち、売り上げに関連した費用であるか営業に関連した費用であるかなど、その機能を区分せず単に並べる方法です。この方法では、作成者の主観に関係なく簡単に作成できます。しかし、情報利用者の立場では当該費用を必要に合わせて分類しなければならないという手間がかかると思われます。

一方、機能別分類とは、費用を売上原価、物流原価および管理原価などのように機能別に分類する方法です。この方法では、売上原価を他の費用と分類して表示します。一見すると、性格別分類より機能別分類の方が財務諸表利用者にとって便利なように見える上、旧企業会計基準の表示方法と基本的に同じであるため良いのではと考えがちです。しかし、費用を機能別に配分する過程で、作成者の多くの恣意的な判断が介入するかもしれません。ひとつ例を挙げてみましょう。製造業を営みながら子会社を保有および管理する持ち株会社の役割をしている会社があります。この会社の売上原価には製造業の製造原価のみを表示すべきでしょうか、それとも子会社の管理のための一般管理費用も含めるべきでしょうか。あるいは、一般管理費用のみ売上原価と表示するのが正しいでしょうか。結論は、各資産の規模、業種形態など会社のさまざまな背景はもちろん、財務諸表作成者の判断により異なってきます。

つまり費用の性格別分類または機能別分類は、それぞれの長所短所があるため、国際会計基準では信頼性があってより目的に適合した表示方法を経営陣が選択できるようにしているわけです。ただ、機能別に分類した包括損益計算書を作成する場合、追加的に費用の性格に対する情報を注釈に公示することとしています。よって、前回も言及しましたが、国際会計基準により作成された財務諸表において注釈は何より重要であると言えます。いま一度強調しますが、国際会計基準で作成された損益計算書を見る際には、注釈を抜かりなく確認することを忘れないでください。

 

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