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所得ある所に税金あり:2011年の韓国税制改正案発表(所得税)

人が生きるために社会という概念が生まれ、国家という組織が構成されて以降、税の問題は常に重要とされてきました。過去を振り返っても税の問題は韓国における最も重要な政策であり、国家運営の根幹であったといっても過言ではありません。

 

近代国家において、税は国家の財政基盤を徴収するだけでなく、富の再分配(不動産など)を通じた市場の安定化のための各種政策を実施する手段として活用されています。つまり、税制によって経済政策における方向性を把握することができると言えるでしょう。前回も述べたとおり、毎年9月に公表される税制改正案は、実務的な問題だけでなく、経済政策を把握することで個別企業の運営方向を設計するための重要な情報になり得るということです。税制改正案は単なる法改正でなく、そこに込められた数々の意図があることを忘れないようにして下さい。

 

税制改正案の発表以降、政治はもちろん、専門家や市民団体などのルートを通じ、意見交換が活発に行われています。個別の争点に関しては、国会を通過するまでに修正されることもあるでしょう。特に税率引き下げの撤回と各種租税特例措置の整理案は財政だけでなく、納税者に与える影響も大きいために最終案の予測が困難です。このため個別企業においては、予算編成時に税制改正の変動要因を織り込む必要性があるでしょう。今回は、前回に続いて所得税を中心に解説を行います。

 

まず、中小企業で働く青年に対し、3年間所得税を免除する制度が新設されました。中小企業における人材不足と失業問題を、税制によってバックアップするという政府の意図が表れています。施行されれば所得税が100%免除されるという、少々「行き過ぎた」制度とも言えます。また、既存労働者とのバランス調整があるため、これから法および施行令、規則等の細部を注視する必要があります。

 

次に、退職所得制度が変更されました。給与所得に比べ、負担が少ない退職所得税を利用した租税回避が制限されることになりました。以下のとおりです。

(現行)退職所得に対して40%の退職所得控除を一括適用。

(改正)給与所得と同様に、退職所得控除を所得階層別に分け、勤続年数によってウェイト付けを行う。

高齢化社会に向け退職金制度を年金制へ移行させる政府の意図もあり、上記改正案は雇用労働部等関係部署との協議下において、年金所得税制と平行して推進される予定となっています。

 

最後に、巧妙な租税回避を誘発する金融商品に対しては、利子および配当に対する所得課税制度が新設されました。また、外国企業に直接関連はありませんが、社会的に大きな問題であった大企業の租税回避(事業承継のため、子会社の利益を増幅させる行為)に関しては、子会社の営業利益に一部課税する法案が上程されました。今回の税制改正案は個人や企業に与える影響が大きく、最終案が確定されるまで引き続き注視することが必要でしょう。

 

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