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【韓国の会計・税務レポート】BEPSプロジェクトについて

 

最近トルコで開催されたG20首脳会談で、グーグルなど多国籍企業の租税回避行為を防ぐためのBEPS(Base Erosion and Profit Shifting・所得移転を通じた税源蚕食)対応方案が最終承認されました。G20首脳会談で承認されたBEPSプロジェクト措置事項は、各国の状況により立法化又は租税条約改定などで履行される予定であり、次期G20財務長官会議で効果的なBEPS履行のための後続措置及び履行モニタリング体系について議論する計画です。

企画財政部は、BEPS措置事項別に租税回避の内容と事例、措置事項及び政府対応の方向に対して最少基準に該当する4つの課題を始め、11月17日から4回にかけて配布しました。BEPS措置事項別に履行強制力に差異がありますが、最少基準は不履行時に他国への波及効果があり、全ての国が同時に履行できる課題として強い履行義務が付与されるもので、租税条約濫用防止、有害租税競争遮断、国家別報告書の導入・交換及び紛争解決手続改善など4つの課題が最少基準課題として提示されました。今回は、最少基準について説明します。

 

(1)租税条約濫用防止

 

租税条約濫用とは、納税者が条約上規定された恩恵を通じて租税負担を軽減させるため、条約上要件又は制約を人為的に充足するか、或いは回避することを試す行為を言う。

代表的な例として、条約適用の基本前提である当事国居住者の地位を取得するため、第3国居住者が該当国にペーパーカンパニーを設立して条約の恩恵を受けると主張するTreaty shoppingがある。上記事例で、A国とB国間には租税条約が締結されていない状態で、B国の国内税法上外国法人に支払われる配当に対し25%の源泉徴収税率が適用される。これに対し、A国の親会社は、B国とC国間の租税条約上配当制限率が0%で、C国の国内税法上外国法人に支払われる配当源泉徴収税率が0%であることを利用して、C国にペーパーカンパニーを設立して租税を回避できるようになる。

このような租税条約の濫用を防止するため、条約締結時に条約題目及び前文に当該条約を通じてTreaty Shoppingなどを通した非課税、課税軽減機会防止を目的にすることを明示することにした。

その他形態の条約濫用を防止するためには、濫用の類型による条約規定を採択する。一般的に条約上配当を受取る法人が支払法人の株式を一定水準以上(例:25%)保有する場合、配当に対する重複課税負担を緩和するための目的で、一般的な場合よりもっと低い税率が適用されるため、このような恩恵を受けるためには当該株式を少なくとも1年間保有することと期間要件を明示することにした。不動産過多保有法人(条約相手国に所在する不動産が法人総資産の50%を超過して構成)の株式譲渡所得に対する不動産所在地国課税原則と関連し、株式譲渡までの1年間に1回でも不動産比重が50%を超過した場合は、譲渡時点に不動産比重が50%以下の場合でも不動産所在地国で課税できるように条約上明示することにした。

経済協力開発機構(OECD)は、既に施行中の国家別両者条約にBEPS措置事項を迅速に反映させるため、2016年末まで多者協定を推進する予定である。韓国は、多者協定開発過程に積極参与する一方、協定の署名可否は最終多者協定結果をみて決定する計画である。

 

(2) 有害租税競争の遮断

 

外国資本を誘致するための国家間の過度な租税減免競争が制限される。租税減免競争が国際的資本移動を歪曲し、各国の財政基盤を蚕食する問題点が提起されてきたためである。特に、イギリスのPatent Box制度のように、知的財産権により発生する所得に低い法人税率を適用することが外国人投資誘致のための過度な租税恩恵であると指摘される。イギリスのPatent Box制度は、内国法人と外国法人の国内固定事業場が保有する特許など知的財産権(IP)を発生する所得に対して一般法人税(21%)より低い税率(10%)で課税されるだけでなく、課税対象所得の場合は特許など知的財産権の処分、譲渡、貸与による所得、特許適用製品の売上による所得も含まれる。

事例では、会社は特許ボックス制度を施行するB国へIP移転することで租税可否が可能となる。経済協力開発機構(OECD)はPatent Box制度のように過度な租税恩恵制度を有害租税競争と規定し、これに対し、判定基準を提示して会員国と非会員国の租税減免制度を評価してきたが、上記事例のように無形資産を活用した租税回避を防止するため、既存の有害租税判定基準に加えて実質的な活動要件及び特例制度に対する同時的情報交換義務を追加することにした。実質的活動要件によると、租税恩恵制度運営国家で知的財産権と関連した実質的研究活動があるべきであり、減免恩恵もこれにより制限される。また、租税恩恵と関連し、透明性を改善するため恩恵制度と関連した例規などの情報交換が義務化される。企画財政部は外国人投資支援制度に対する有害性を検討し、新規有害減免制度導入を規制することにした。

 

(3) 国家別報告書の導入

 

多国籍企業に対する国際的共同対応を強化するため、国家別報告書が導入され多国籍企業の国家別活動内訳、事業遂行範囲などに対する包括的な情報を国家別課税当局間に共有されることになる。これと関連し、多国籍企業の経営情報及び移転価格関連取引現況が含まれた『国際取引情報統合報告書』の提出を義務化する内容の2015年改正税法案が12月2日国会本会議を通過しており、企画財政部は国家別報告書の場合は2016年税法改正案に反映して導入することの検討中にある。

区分

国際取引統合情報報告書

(2016年施行予定)

国家別報告書

(2017年導入予定)

マスターファイル

ローカルファイル

作成義務

多国籍企業の最終親会社

多国籍企業の現地法人

多国籍企業の最終親会社

提出期限

親会社(現地法人)の法人税申告期限

現地法人の法人税申告期限

親会社の会計年度末基準1年以内

提出対象

現地課税当局

現地課税当局

現地法人が所在する課税当局を通して署名国間共有

含まれた内容

多国籍企業の組織構造、無形資産、連結財務諸表などの財務活動内容

特殊関係者間の取引内容、金額及び移転価格決定方法など

租税管轄権所得、税金、事業活動の配賦内訳及び居住法人リスト

<国際取引統合情報報告書及び国家別報告書>

 

(4) 紛争解決の手続き改善

 

新規租税条約規定導入により発生する紛争解決のため、相互合意手続き(MAP、Mutual Agreement Procedure)が改善される。条約解釈及び適用上不確実性を最小化し、意図していない二重課税を防止する目的である。MAP要請を条約締結両国のどこへでも提出できるように条約に明示するか、或いはMAP要請を受付けた居住地国が当該要請が正当でないと判断した場合、相手国に当該事実を通報したり、関連協議を進行できるように制度を設けることにした。また、MAPによる両国間合意結果は国内法上賦課除斥期間にかかわらず履行するという内容を条約に含めることとした。

 

 

‐以上‐

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