トップページ > 会計税務ニュース > 【韓国の会計・税務レポート】役員に賞与金及び退職金を支払う場合の税務上留意事項

STARSIAがお届けする業界NEWS 会計税務ニュース

【韓国の会計・税務レポート】役員に賞与金及び退職金を支払う場合の税務上留意事項

韓国の税法では、役員に支払う賞与金及び退職金に対して従業員とは異なり、損金算入の要件等を厳格に規定しています。例えば、2012年1月1日付けの所得税法改正で、役員の過剰退職金支払による租税回避行為を防止するため、勤労所得に比例する限度を新設しており、その限度を縮小する2019年税法改正案も提出されている状態です。

 

役員の賞与金及び退職金は、その支払要件と方法等により法人の損金認定可否が決定されるだけでなく、所得区分による個人所得税の差異が発生します。以下では、税法上の役員の範囲と、役員に支払う賞与金及び退職金と関連した税務上留意事項についてご紹介します。

 

1.役員の範囲

法人税法では、役員を以下の何れか1つの職務に従事する者と規定しています。大法院の判例でも、商法上の登記役員のみでなく、登記簿謄本や定款に記載されている役員ではなくても、経営全般の意思決定及び執行に積極的に参与するか、或いは会計及び業務に関する監督権を行使する者も役員に含まれることとし、役員の範囲は広く解釈されています。

1) 会長、社長、副社長、代表理事、専務理事及び常務理事等理事会の構成員と清算人

2) 合名会社、合資会社及び有限会社の業務執行社員、又は理事

3) 有限責任会社の業務執行者

4) 監査役

5) 上記に準ずる職務に従事する者

 

2.役員の賞与金

法人が役員に支払う賞与金のうち、利益処分により支払う賞与金は損金に算入せず、定款・株主総会・社員総会、又は理事会の決議により決定された給与支払基準により支払う金額に限って損金と認定されます。

ここで、正当な給与支払基準に該当するかの可否は、その基準により支払う賞与金が通常の勤労提供の代価としての給与の実質をもっているか等を総合的に考慮して判断します。例えば、定款・株主総会・社員総会、又は理事会の決議により決定された賞与金支払基準及び役員の実績により賞与金を支払わず、即ち、役員全員に賞与金支払基準及び実績により賞与金を区別して支払わず、代表理事にのみ賞与金を支払って費用と計上した場合は損金と認定されません。

 

3.役員の退職金

(1) 原則

役員に支払う退職金は、従業員と同様に、役員が現実的に退職する場合に支払う金額に限り損金と認定されます。ここで、役員が現実的に退職する場合は、以下の場合を含めます。

1) 役員がその法人の組織変更・合併・分割、又は事業譲渡により退職した場合

2) 定款、又は定款で委任された退職給与支払規定により無住宅者の住宅購入、本人と扶養家族の長期治療や療養、天災地変による災害等を事由に、その時までの退職給与を中間精算して支払った場合(中間精算時点から新たに勤務年数を起算して退職給与を計算する場合に限る)

 

(2) 中間精算退職金

上記の現実的な退職以外の事由による退職金、即ち、中間精算退職金に該当すると、現実的な退職に該当するまで、業務と関連のない仮払金として取扱われます。このような場合、法人段階での様々な不利益(仮払金に対する認定利息の益金算入及び支払利息の損金不算入、貸倒引当金設定対象債権での除外等)が発生するのみでなく、個人段階での不利益(益金算入された認定利息に対する所得税の課税)も発生することになります。

 

(3) 損金算入の限度

役員に支払う退職金は、以下の金額を限度に法人の損金に算入します。

1) 定款で定めた退職給与(退職慰労金等を含む)により支払う金額。但し、定款で委任された退職給与支払規定が別途にある場合は、当該規定による金額によります。

2) 定款等で定めた退職給与がない場合は、法人税法で定めた金額。即ち、役員が退職する日から遡及して1年間当該役員に支払った総給与額の10分の1に相当する金額に勤続年数を乗算した金額

 

(4) 退職所得の限度

上記の法人の損金算入限度とは別途に、役員個人に対する退職所得の限度も規定しています。役員退職金のうち、2012年以降の勤務分に該当する退職金に対しては、以下の限度まで退職所得と課税し、超過する金額は勤労所得として課税されます。更に、2019年税法改正案によると、以下の算式での支払倍数が3倍から2倍に下向調整されます。役員の退職所得は、より縮小されると見込まれます。

 

役員の退職所得の限度=退職前3年間の平均給与 × 1/10 × 2012年以降の勤続期間 ×支払倍数(3倍)

 

 

- 以上

ページトップへ

月別