- 2021年4月15日
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【韓国の会計・税務レポート】反社会的域外脱税に対する税務調査
去る3月24日、国税庁は、国籍等身分を偽装、或いは複雑な国際取引を利用した知能的な域外脱税嫌疑者に対する税務調査を行った結果について発表しました。
以下では、国税庁税務調査で明らかになった脱税の類型や主な事例についてご紹介します。
1.脱税の類型
国税庁が発表した脱税の類型は、以下の3つです。
第一脱税類型は、「国籍等身分偽装」です。
納税義務のない非居住者と偽って所得や財産を海外に隠匿し、コロナ防疫・医療等国の福祉及び便宜のみを享受する二重国籍者や、企業形態を外部監査は受けない有限責任会社に変更し、関係会社間取引を通じて所得を海外に移転した外資系企業がその類型です。
第二脱税類型は、「富の変法増殖」です。
財産を増やすために優れた経済的地位や背景を利用して複雑な国際取引構造を企て、これにより正当な代価なく富を増加させた資産家がその類型です。
第三脱税類型は、「国外所得の隠匿」です。
仲介貿易・海外投資等正常取引に偽装して所得を海外に移転し、域外秘密口座を通して国外に所得を隠匿した知能的域外脱税嫌疑者がその類型です。
2.脱税の主な事例
事例1:ペーパーカンパニー名義で海外不動産を取得した後、非居住者に偽装した子女に法人の持分を移転する方式で海外不動産を贈与した件
– 居住者A氏は、外国永住権を取得した後、子女に譲る海外不動産を購入する目的で現地にペーパーカンパニーを設立。ペーパーカンパニーは当該不動産の取得・管理活動のみを行う。
– A氏はペーパーカンパニー名義で海外不動産を購入後、法人持分を子女に移転する方法により不動産を子女に贈与
– 贈与持分については現地課税当局に贈与税を申告したが、控除限度に達しないため税金は納付しない。
– 子女は留学期間を除いてほぼ国内に居住していたが、外国永住権者である点を利用して国内では非居住者に偽装し、贈与を受けた不動産に対する贈与税申告はしない。
事例2:外部監査・開示義務のない有限責任会社に企業形態を変更し、過度な経営諮問料支払契約等関係会社間取引を通じて国内所得を国外に移転した事例
– B社は当初外部監査や開示義務のない有限会社として運営されていたが、2019年関連法律改正により外部監査を受けることとなり、有限責任会社に会社体制を変更
– 過度な経営諮問料契約等関係会社間の取引を通じて海外親会社に巨額の経営諮問料を支払って欠損が発生する。
– 海外関係会社に対する売上債権の回収を正当な理由なく遅らせ、欠損の状況でも海外関係会社への支援を続ける。
– また、韓国の関係会社に対しても役務対価を過少に受取り、支援手数料を受けない等不当な支援を続ける。
事例3:法人の売上高を故意に縮小して企業価値を転落させた後、子女に法人持分を低価で譲渡した事例
– オーナーはグループの核心企業のC社の経営権を子女に承継(相続)するための長期計画を立て、持分を譲渡する前に株式価値を下落させる案を講じる。
– C社は海外取引先から貿易仲介手数料を受取り、子女名義で運営する国内関係会社が分散して受取る方法で売上高と営業利益を縮小させる。
– C社は相当な営業利益が発生する優良企業だったが、子女に持分を譲渡する直前に巨額の欠損が発生
– オーナーの子女は、人為的に低評価されたC社の株式を額面価格に及ばない低い価格で取得して税負担を最小化し、実質的に経営権を承継
事例4:タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、国内売上をペーパーカンパニーの売上とする方法で売上を下落させた事例
– D社は最初から脱税目的でタックスヘイブンに人的・物的施設のない名前だけのペーパーカンパニーを設立
– 国内オープンマーケットの売上高を海外ペーパーカンパニーが販売したものと虚偽契約書を作成して売上高を下落
– サービス販売権をペーパーカンパニーに移転した後、国外ユーザーから役務対価を域外口座で受取って隠匿
– ライセンサーに支払う使用料をペーパーカンパニーが支払ったものと偽装し、使用料に対する源泉徴収も欠落
事例5:外国企業から受取った貿易取引斡旋コミッションを域外保有秘密口座で受取り、所得及び海外金融口座の申告漏れ事例
– E氏は海外企業間の貿易取引を斡旋・仲介し、海外企業からコミッション(仲介手数料)を受けている。
– E氏は、海外コミッションを海外多数国に開設した多数の未申告秘密口座に分散させて受取る。
– 国家間金融情報交換等を避けるため、多額の現金を繰返し引出・入金する方法で、通帳残高が一定金額を超えないように管理(海外口座残高が5億ウォン以上の場合は、海外金融口座申告をしなければならない)し、一部は国内に搬入
- 以上 -