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【韓国の会計・税務レポート】非上場株式取引での時価に関連する最近の判例

ソウル行政裁判所(ソウル特別市を管轄する行政訴訟の第1審裁判所)は、国民に知る権利を提供するとの趣旨で、

主な判決について同裁判所のホームページに定期的に掲載しています。

以下では、去る9月3日に掲載された非上場株式取引と関連し、時価が問題となった事件

(ソウル行政裁判所2021.08.17.宣告2020クハブ70014判決)を紹介します。

同判決では、キャッシュフロー割引法で株式が評価された場合でも経営権プレミアムが

反映されたとしか考えられないため、同方法による価格を時価とみなすことはできないと判断しました。

 

 

1.事実関係

 

(1) 原告は、2011年1月3日に設立された、芸能人マネージメント業、アルバム制作や供給業等を

事業とする非上場会社である株式会社D(以下、「この事件会社」と言う)の代表取締役であり、

2015年10月31日現在、この事件会社の発行株式10,000株のうち5,500株(55%)を

保有している最大株主であった。

 

(2)  原告は、2015年11月20日にFからこの事件会社の株式4,500株(45%)を

1株当たり1,382,476ウォンで譲受け、この事件会社の株式100%を保有することになった

(以下、原告とFとの間の取引を「この事件取引」とし、この事件取引の対象株式を「この事件争点株式」と言い、

1株当たりの取引価額である1,382,476ウォンを「この事件争点価額」と言う)。

 

(3) 原告は、2015年11月25日に株式会社G(以下、「G」と言う)に、

この事件会社の株式のうち7,000株(70%)を1株当たり1,800,000ウォンで譲渡した

(以下、原告とGの間の株式譲渡契約を「この事件比較取引」とし、

原告とGの間の1株当たりの取引価額である1,800,000ウォンを「この事件比較価額」と言う)。

 

(4)  ソウル地方国税庁は、この事件会社の株式変動内訳を調査する過程で、

原告がFからこの事件争点株式を1,382,476ウォンで買収して、直ちにそのうちの一部を

1,800,000ウォンでGに売渡し、F名義の株式は、本来この事件会社の創業者の1人であるHが

名義信託した資産であることを確認した(以下、H、Fを「H側」と言う)。

ソウル地方国税庁は、この事件取引日当時、この事件争点株式の時価はこの事件比較価額と同額の

1株当たり1,800,000ウォンであるとの前提の下で、原告がHからこの事件争点株式を時価より低い

1株当たり1,382,476ウォンで譲受けることにより、その差額相当額の贈与を受けたものと判断し、

原告の住所地管轄税務署長の被告に、このような趣旨の課税資料を通知した。

 

 

2.争点

 

(1)  原告の主張

原告とHは、この事件取引当時、原告がこの事件会社の代表取締役兼最大株主として、

この事件会社の急速な成長に寄与したこと、原告の保有持分が過半数の55%であることから、

この事件会社に与える実質的な影響力が計り知れないため、いわゆる経営権プレミアムがあること、

関連税金と取引費用を反映した実質的な現金取得分等を全て考慮し、真摯な交渉の末、

この事件争点価額を決定した。

 

また、この事件取引の目的物は、この事件会社の株式45%であって会社に影響力を行使し

難い少数持分である一方、この事件争点取引の目的物は、この事件会社の株式の70%であって

この事件会社の経営権等非財務的な価値を含んでいる。

 

このように二つの取引は、その性格が顕著に異なっており類似取引とはみなし難いため、この事件比較価額が、

この事件取引当時、この事件株式の時価であったと断定することはできない。

 

(2)  被告の主張

この事件比較取引は、利害関係のない第3者のGと原告との間の取引である。

Gは、この事件会社株式の適正価格を評価するため、会計事務所に評価を依頼して

キャッシュフロー割引法による評価額でこの事件比較価額を決定しており、

上記の価額にはこの事件会社の経営権プレミアムが含まれていないため、この事件比較価額は、

この事件取引当時のこの事件会社株式の時価とみることができる。

 

この事件会社の設立や成長の経緯等に照らしてみると、H側が実質的にこの事件会社に対して

影響力を行使していたにもかかわらず、原告とH側はこの事件比較価額の決定後、

合理的理由なくこの事件比較価額より約30%も低い金額でこの事件取引価額を決定した。

このような点から照らしてみると、この事件取引当時、この事件株式の時価は、

この事件比較取引と同額の1株当たり1,800,000ウォンであったとみる方が妥当である。

 

 

3.争点に対する判断

 

被告は、この事件比較価額が旧相贈税法第60条第2項の時価に該当すると主張する一方、

原告は、この事件比較価額には経営権プレミアム等が含まれているため、

上記価額をこの事件争点株式の時価であるとはみなせないと主張する。

従って、この事件の争点は、この事件比較価額を、この事件取引当時のこの事件争点株式の

時価に該当するとみることができるかどうか、の可否である。

 

市場性の少ない非上場株式の場合も、それに対する売買事実がある時はその取引価額を時価とみなして

株式の価額を評価すべきであり、相贈税法が規定した補充的な評価方法により評価してはいけないとするが、

時価というのは、一般的、かつ通常の取引によって形成された客観的交換価格を意味するため、

そのような売買事例価額が時価として認められるためには、当該取引が一般的、かつ通常の方法で行われ、

贈与日当時の客観的交換価値を適正に反映しているとみられる事情が認められなければならない

(最高裁判所2012.04.26.宣告2010ヅ29888判決等)。

一方、会社の発行株式を経営権とともに譲渡する場合、その取引価格は、株式のみを譲渡する場合の

客観的交換価値を反映する一般的な時価とはみなせない

(最高裁判所1982.02.23.宣告80ヌ543判決、最高裁判所2003.06.13.宣告2001ヅ9394判決等)。

このように、経営権の支配を伴う株式の譲渡は、そうでない場合に比べ、

一般的に価格形成が高くなる可能性があるため、その譲渡代金が直ちに当該株式の

一般的な時価であるとはみなし難い(最高裁判所2007.09.21.宣告2005ヅ12022判決等)。

 

 

4.結論

 

この事件取引当時、この事件争点株式の時価が、この事件比較価額と同額の1株当たり

1,800,000ウォンであることを前提とするこの事件処分は違法であるものとするため、

これを指摘する原告の主張は理由がある。

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