- 2022年3月16日
- > 会計・税務
【韓国の会計・税務レポート】国内未登録特許権に対する課税に関連する最近の裁判所の判決
「特許使用料に対する最近の韓国での争点」(2017年11月29日付掲載)
という主題のレポートで、韓国内において特許が登録されていなければ
韓国では特許権の侵害が発生しないため、韓国法人がアメリカ法人に支払う特許権使用料は
国内源泉所得に該当しないとの第一審裁判所の判決をご紹介しました。
その後、課税当局(被告)は下級審判決を不服として最高裁判所に上告し、
2022年2月10日、最高裁判所は原審判決を破棄、差し戻しました。
以下では、A社(アメリカ法人)とB社(A社の100%子会社)が
管轄税務署を相手に起こした法人税更正拒否処分取消訴訟の上告審で、
A社側の勝訴と判断した原審を破棄し、
第2審裁判所に差し戻した最高裁判所の判決内容についてご紹介します。
最高裁判所の裁判部は、「原審は、『(A社側が受けた)特許権使用料に、
国内源泉所得として源泉徴収対象となる著作権、ノウハウ、
営業上の秘密等に対する使用代価が含まれている』との被告の主張を
審理・判断すべきであった」と述べました。
アメリカ法人が韓国内で登録していない特許権等は国内源泉所得に該当しませんが、
A社の所得とした使用料には韓国内未登録特許権以外にも技術料等が含まれているため、
原審がこれを反映しなかったことは誤った判決であるとのことでした。
この訴訟の発端は、2011年にA社とC社(韓国法人)が締結した価格に起因します。
当時、A社はC社にアンドロイド基盤のスマート機器事業に必要な特許使用権を付与し、
使用料(ロイヤリティ)を受ける契約を締結しました。
これには、A社やB社が将来、所有・統制する特許まで全て含まれていました。
以降、C社は2012年から2015年にかけ、B社側に4年間の特許権使用代価として
約4兆3582億ウォンを支払い、韓米租税条約に基づき、全額の15%に当たる約6,537億ウォンを
A社側が負担する法人税として課税当局に納付しました。
A社は、2016年、課税当局に「特許権使用料のうち韓国に登録されていない特許権使用代価は
国内源泉所得ではないため、源泉徴収税額を払い戻さなければならない」との内容の
更正請求を行いました。
2015年現在、約54,600件のA社の全特許のうち、韓国に登録された特許は1,733件でした。
A社はこれを基に源泉徴収税額約6,537億ウォンの中から
6,344億ウォンに対する還付を要求しました。
課税当局はこれを拒否し、A社は2017年に訴訟を起こしました。
しかし、下級審では韓米租税条約に基づき、A社が韓国に登録していない特許権の使用料は
国内源泉所得に該当しないとして、A社側の勝訴を決定しました。
法人税法では、外国法人が韓国内に登録していない特許権に対する使用料も
国内源泉所得に該当すると規定していますが、国際租税調整に関する法律では、
国内源泉所得を区分する際、租税条約を優先に適用すると規定しているためです。
第2審は、A社側の更正請求額から韓国に登録した特許権に該当する7億ウォンを除き、
超過納付した法人税額を6,337億ウォンと計算しました。
また、第2審は、特許権使用料を受けた主体はA社ではないため、
更正請求権はB社にのみ存在するとしましたが、最高裁判所は、
「所得の実質的な帰属者は課税標準と税額の更正を請求することができる」とし、
A社も請求可能であると判断しました。
今回の最高裁判所の判決は、数年間続いてきた国家敗訴判決を克服したことに意味があります。
課税当局は、最高裁判所の審理期間中に知的財産権使用料の
源泉を定める方法に関する国内外の法律資料だけでなく、
租税法や特許法分野の専門家の意見書等の資料を裁判所に提出したと知られています。
これまで課税当局に不利に成立していた判決が覆されたことで、類似した訴訟事件はもちろん、
知的財産権使用料に対する源泉地判断が問題となった事例で、
国家の課税権を守るための論理的基礎を整えたとも評価されています。