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海外子会社からの配当金二重課税調整の合理化

前稿では「2022年税法改正案」の主な内容を紹介しました

「2022年税法改正案の発表」(2022年8月16日付掲載)参照)。

同改正案で企業競争力向上と関連し注目を集めているのは、

国内親会社の法人税課税標準から海外子会社からの配当金を除外させるという改正案です。

 

本連載の2018年9月の記事

「韓国における国家間二重課税問題の調整方法に対する改正の必要性」(2018年9月17日付掲載)参照)では、

国家間二重課税の調整方法として、海外子会社からの配当金に対する益金不算入制度、

いわゆる国外所得免税制度の導入の必要性について説明したことがあります。

 

外国納付税額控除制度の場合は、税額控除対象範囲の制約や国別税額控除限度等で

国際的な二重課税が完全に解決されない場合が一般的です。

しかし、海外子会社からの配当金に対する益金不算入制度の場合は、

同配当金に対する国際的な二重課税がほぼ解決されると言えます。

 

実際、OECD(経済協力開発機構)38加盟国のうち31カ国は海外子会社からの配当金に対する

益金不算入制度を採択しています。

海外子会社からの配当金に対し外国納付税額控除を適用する国は、韓国、チリ、コロンビア、コスタリカ等

7カ国にすぎないのが実情です。

 

イギリスと日本が2009年に、

アメリカが2017年に海外子会社からの配当金に対する益金不算入制度を導入して以来、

韓国の業界と学界は同制度の導入を政府に申し立ててきたと聞いています。

ついに同制度の導入に向けた税法改正が行われることになりました。

 

以下では、同改正案と関連して企画財政部が発表した改正趣旨、期待される効果、適用事例等を紹介します。

 

1.改正趣旨

  • 海外留保財源の国内への送金促進誘導等のため、グローバルスタンダードに合わせて二重課税調整を拡大する。
  • 現行の税額控除方式は二重課税調整が完全に解決されないため、海外子会社からの配当所得課税免除方式に比べ国内送金時に追加的な税金負担問題があり、海外留保財源の国内送金を阻害する。

 

2.期待される効果

  • 海外留保財源の国内送金を通した国内投資の活性化、企業競争力の向上、多国籍企業の地域本部誘致等が期待される。
  • 海外直接投資企業の海外留保残高は、韓国銀行の国際収支表等を考慮して推定したところ、2021年末基準で約100兆ウォン以上であり、本国への送金余力は充分である。
  • 国内企業の海外投資による収益が持続的に増加し、海外留保金額も2010年以後、大幅に増加傾向をみせている。アメリカ(2017年)及び日本(2009年)も海外子会社からの配当金に対する益金不算入制度導入以降、本国への送金効果が発生している。

 

3.低税率国に設立した子会社からの配当に対する適用可否

  • ただし、租税回避のため低税率国に設立した子会社からの配当には、益金不算入が適用されない。
  • 低税率国にある子会社の留保所得に対し配当とみなされる金額と、実際に配当される金額等は益金不算入制度を適用せず、現行通りに外国納付税額控除を適用する。
  • グローバル最低限税(15%)が導入される場合、海外低税率国に子会社を設立する形態の租税回避は容易ではないと見込まれる。

 

4.適用事例

<仮定>

(i)海外子会社(Y)の所得100を国内親会社(X)に全額配当

(ii)XはYの100%株主

(iii)韓国とA国は租税条約締結(配当所得源泉徴収税率5%)

(iv)国内親会社の別途所得はないものと仮定

(v)海外法人税率は15%、海外源泉徴収税率は5%、国内法人税率は22%

 

 

韓国

租税条約

A国

↑(3)

↑(1)、(2)

親会社(X)

100%子会社(Y)

配当85

 

税負担

X社のグローバル税負担

外国納付税額控除制度

現行

配当金益金不算入

改正案

(1)海外法人税15%

100×15% = 15

100×15% = 15

(2)海外源泉税5%

85×5% = 4.25

85×5% = 4.25

(3)国内法人税((4)-(5))

2.75

(4)国内法人税22%

100(85+15) x 22% = 22

(5)外国納付税額控除

Min[(1)+(2)、国別限度]

19.25[=Min(15+4.25、22)]

* 国別限度= 22×(100/100)

(6)グローバル総税負担
((1)+(2)+(3))

22

19.25

 

上記の通り、外国で納付した法人税(源泉徴収税を含む)が国内での法人税より低い場合、

海外子会社からの配当金に対する益金不算入制度を導入する場合、国内での追加的な法人税負担はなくなります。

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